11/07/09 20:52:13.06
経済「硬着陸」の足音
さる6月24日、中国の温家宝首相は訪問先のイギリスで中国の経済問題に関する注目の発言を行った。
今年の消費者物価指数を4%以内に抑える政府目標の達成が「困難である」と認めたのである。
中国政府がこの数値目標を掲げたのは確か年初のことであったが、それ以来半年間、
政府は「月1度」という前代未聞の高い頻度で預金準備率の引き上げを断行するなど、
一連の金融引き締め策を実施してインフレの抑制に必死であった。
しかしそれが「目標達成困難」となったなら、政府のインフレ抑制策は現時点では失敗に終わった、といえる。
本欄がかねて指摘しているように、中国のインフレは過去数十年間にわたる貨幣の過剰供給の必然の結果であるから、
短期間の金融引き締め策の一つや二つで収まるような性格の問題でもない。
温首相は上述の談話で「今後のインフレ抑制は可能だ」とも語っているが、現実はそう甘くはない。
6月の消費者物価指数は5月のそれよりも大幅に上昇していることが確実となった一方、
「7月のインフレ率は6月よりもさらに高くなる」との予測が中国農業銀行からも出されている。
中国人民銀行貨幣政策委員会の李稲葵委員に至っては最近、向こう10年間、
慢性的なインフレが問題であり続けると暗澹(あんたん)たる見通しまで示している。
その一方、今年から実施されている一連の金融引き締め策は深刻な副作用を引き起こしている。
金融引き締めの中で各金融機関の融資枠が大幅に縮小された結果、
多くの中小企業は銀行から融資をもらえず大変な経営難に陥っているのである。
6月の中国経済関係各紙を開くと、「資金難、中小企業倒産ラッシュが始まる」
「長江デルタ、中小企業生存の危機」「温州地域、中小が二割生産停止」などのタイトルが躍っているのが目につく。
金融引き締め策実施の結果、国内総生産の6割を支える中小企業が苦境に立たされていることがよく分かる。
中国経済の減速はもはや避けられないであろうが、実際、減速に対する懸念が中国国内でも広がっている。
6月27日、前出の李稲葵氏も外国メディアからの取材の中で「減速の懸念」を表明しているし、
経済学界の大御所で北京大教授の励以寧氏は同じ27日、金融引き締め策がそのまま継続していけば、
中国経済は「インフレ率が上昇しながらの成長率の減速」に直面することになるだろうとの警告を発している。
それらの懸念や警告はまったく正しい。このままいけば中国経済は確実に落ちていくのであろう。
しかしだからといって、政府は現在の金融引き締め策を打ち切ることもできない。
引き締めの手綱を緩めれば、インフレがよりいっそうの猛威を振るってくるに違いない。
政府の抱えるジレンマは深まるばかりである。
こうした中で、6月の北京市内の不動産物件の成約件数が29カ月ぶりの最低水準に落ちたなど、
今年の春から始まった不動産市場の冷え込みが進んでいる。
それもまた、政府による金融引き締めの結果の一つであるが、
不動産市場の停滞がさらに続くと、大幅な価格の下落がいずれやってこよう。
最近、社会科学院工業経済研究所の曹建海研究員という人物の口から、
「2012年に北京の不動産価格が5割も暴落するだろう」との不気味な予言まで出されている。
経済の減速と不動産バブルの崩壊が徐々に目の前の現実となりつつある中、国際社会でささやかれ始めている
中国経済のハードランディング(中国語では「硬着陸」)は、いよいよその足音が聞こえてくる。
(>>2以降に続く)
ソース:MSN産経ニュース 2011.7.7 08:21
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