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- 「儀軌」引き渡し 日韓で文化財の共同活用を(5月30日付・読売社説) -
朝鮮の李王家ゆかりの朝鮮王朝儀軌(ぎき)など文化財1205冊を、韓国政府に引き渡す日韓図書協定の
承認案が、参院本会議で可決・成立した。
菅首相は昨年8月、日韓併合100年の首相談話の中で引き渡しを表明し、昨年11月に両国間で協定が
調印された。
儀軌の史料としての性格や日本に渡った経緯を踏まえれば、引き渡しは妥当な措置と言える。
朝鮮王朝儀軌は、王朝の主要行事を文章と図面で記録した冊子で、日韓併合後、当時の朝鮮総督府が
宮内省に納めたものだ。
李王家の人々を「王公族」として迎えたことから、伝統的儀式やしきたりを理解するための参考資料として
使われた。
戦後も宮内庁が保管した。2001年に一般の人も閲覧できるようになった後、その所在が広く知られるように
なった。
一方、韓国国会は2度にわたる決議で、日本政府に「返還」を求めていた。
日韓間では、1965年の国交正常化の際、日韓基本条約と共に締結された請求権・経済協力協定で、財産
請求権の問題は最終的に解決されている。日本政府に文化財の返還義務はない。
しかし、今回は日韓の「友好関係の発展に資するための特別の措置」として、「返還」ではなく「引き渡す」こと
になった。日韓図書協定を結ぶことで、それが可能となった。
国会審議で自民党は、韓国政府が所有している旧朝鮮総督府所蔵の日本の文化財は戻っていないなどと
指摘し、協定に反対した。政府は、流出の経緯、背景が違うと反論し、理解を求めた。
日本の研究者のために、宮内庁は朝鮮王朝儀軌を複写する作業をほぼ終えた。原本引き渡し後は、この
複写版を宮内庁で閲覧できるようにする予定という。
この機会に、日韓両政府で話し合い、両国にある文化財を相互に活用できるような体制作りを進めていくべき
だろう。
例えば、日韓交流史の貴重な史料である対馬宗家文書は、日韓両国の博物館などに散在し、研究者が閲覧
するのは容易ではない。
画像のネット上での公開を進めたり、複写版を相互に提供したりすれば、日韓双方にメリットがあるのではないか。
文化財は、国や地域の財産ではあるが、広く国際的な研究対象となることで、より普遍的な価値を持つ。多くの
人々の心を豊かにしてくれるはずだ。
ソース : (2011年5月30日01時28分 読売新聞)
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