11/05/13 18:17:24.32
【ワシントン斉藤信宏、白戸圭一】米国と中国が経済や外交関係を包括的に話し合う「米中戦略
・経済対話」は10日(日本時間11日未明)、ワシントンでの2日目の閣僚級協議を行い、米中間
の貿易不均衡を是正していくことなどを盛り込んだ合意文書を発表し閉幕した。両国はまた、
アジア太平洋地域の安全保障問題について話し合う当局者による新たな協議の場を設置
することでも合意した。
合意文書では「中国が引き続き人民元相場の弾力化を進める」ことを確認した。しかし、人民元の
弾力化のペースについては、対中貿易赤字を膨らませる米国側が早期かつ大幅な人民元の切り
上げを求めている一方、性急な切り上げが輸出に打撃を与えることを懸念する中国側は「自国の
事情を考慮し、独自のスピードで人民元改革を行う」(朱光耀・財政次官)としており、認識は隔た
ったままだ。
今回の戦略・経済対話は、中国が10年のGDP(国内総生産)で日本を抜き、米国に次ぐ世界
2位の経済大国になったことが確定して以降、初の開催となった。合意文書は米中両国を「世界
の2大経済国」と位置付け、「両国の政策は世界経済全体の健全性に多大な影響を与える」と
強調。不均衡の是正に向け「両国が包括的な対策を実施する」と明記した。
具体的には、中国が内需拡大に向けた努力を継続し、米国が貯蓄と輸出の拡大を推進して貿易・
経常赤字の縮小を図るとの内容。不均衡是正の実現には、為替政策が大きく影響するが、合意
文書は人民元相場の一層の弾力化に加えて、米国にも「相場の過度の変動を注意深く警戒する」
ことを促す文言が盛り込まれた。米国の量的緩和政策によるドル余剰が資源や食料価格の高騰
や過剰な資本流入を通じて、新興国のインフレリスクを高めているとの中国の懸念を踏まえた
ものだ。
しかし、この急激なドル安回避の方針も、米国側が国内景気の本格回復に当面、金融緩和を維
持しなければならない中、どこまで効果のある政策を取れるかは分からない。
両国は「貿易と投資の自由化を推進」(王岐山・中国副首相)でも足並みをそろえることを強調
したが、どこまで実効性を伴えるかが、世界経済と国際金融市場の安定に大きく影響しそうだ。
◇アジア安保、協議の場新設
クリントン米国務長官は閉幕後の記者会見で、3回目となる今回の協議で「相互の理解と信頼
が深まった」と強調。戴秉国国務委員(副首相級)も「信頼を増進し、協力を深めることに成功
した」と述べ、米中が「戦略的信頼関係」に基づき、アジア太平洋地域の平和と安定に向け連携
を強化していく姿勢を鮮明にした。アジア太平洋安保をめぐる新たな協議は今年のできるだけ
早い時期に第1回会合を開く予定で、中国の海洋進出や北朝鮮の核兵器開発など広範な安全保障
問題について議論される見通しだ。
一方、焦点の一つだった中国の人権問題では、クリントン氏が中国当局による民主化運動活動家
の身柄拘束などに「深刻な懸念」を表明。記者会見でクリントン氏は「我々は人権を含むすべ
ての困難な問題を議論し、互いの考えを明らかにした」と発言したが、中国側の発言はなかった。
オバマ米大統領は1日目の協議終了後、ホワイトハウスに戴氏と王岐山副首相を招いた際に人権
問題で懸念を表明し、表現、信教、政治参加の自由に関する普遍的権利を尊重するよう求めた。
米国にとって人権問題は「米外交の本質にかかわる問題」(米政府高官)であるため、大統領
自らが民主化運動活動家らの身柄拘束やインターネットへの規制をやめるよう強くくぎを刺した
格好だ。
このほか米中は北朝鮮問題で、南北の建設的対話と6カ国協議の早期再開を求めた今年1月の
米中共同声明を再確認。気候変動問題などでの連携強化でも一致した。
毎日新聞 2011/05/13
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