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【コラム】アサヒスーパードライが韓国で半額になったら(上)
スーパーでいつも不思議に思う商品はアサヒビールだ。ロッテマートで販売されている「アサヒ
スーパードライ」の350ミリ缶の価格は2650ウォン(約209円)。一方、同じ容量の韓国製のビールは
1210ウォン(約95円)で販売されている。不思議に思うのは、中間層が客の大半を占めるスーパーで
、これほどまでに価格の差があるにもかかわらず、スーパードライが売れているという事実だ。
昨年、韓国ではスーパードライの350ミリ缶の売り上げが2400万本に達した。これはスーパーでの
売り上げが大幅に伸びたことによるものだ。
「日本のビールはおいしい」という評価は韓国で特に根強い。これは「韓国のビールはまずい」
という評価の裏返しとなっている。昨年、アサヒビールの荻田伍会長にインタビューした際、
こうした評価について尋ねた。これに対し荻田会長は「原材料や製造設備には差はないと思う」
と答えた。韓国ではよく「日本のビールがおいしいのは、麦芽の含有量が多いためだ」と
いわれているが、実際のところ、スーパードライは麦芽の含有量を減らすことによって
大ヒットした商品だ。麦芽100%をうたい、半値で販売される韓国製ビールを横目に、年間
2400万本も売れるのだから、麦芽のせいでないことは明らかだ。
荻田会長は「ビールは酵母、麦芽、熟成、温度管理、ホップの投入といったさまざまな技術的
要素が組み合わさってできた製品だ。製造工程における技術面でのちょっとした違いが、微妙な
味の差を生んでいるのかもしれない」と語った。だが、荻田会長も味の違いがどのようなもの
なのかを指摘することはできなかった。これは、経済学者の野中郁次郎・一橋大名誉教授の言葉を
借りれば「暗黙知(言葉で表現するのが難しい主観・直観的な現場の知識)」といえるだろう。
2008年にインタビューを行った際、野中教授は「暗黙知」が日本の産業にとって最大の強みだ、
と指摘した。韓国のビールは、原材料や製造設備という面で、日本の「形式知(文章や図表・
数式などによって説明・表現できる知識)」を受け入れることはできたが、暗黙知はまだ理解
できていないというわけだ。その違いはたとえ小さな違いでも、2倍の価格にもかかわらず
売れる商品を作ったという結果を考えれば、決して侮れないものだ。
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