11/02/26 09:42:52.89
「いつもお天道さまが守ってくれた-在日ハルモニ・ハラボジの物語」を読む
■人間の尊厳を求め闘った人々
この本に登場する34人のハルモニ・ハラボジは、1920年代から30年代の初めの生まれ。日本の「韓国併合100年」を身に
引き受けて生きた人々である。著者が話を聞いた時は健在だったのに出版前に亡くなった方もあり、心が痛む。
どの写真も明るい。家族に囲まれた和やかな笑顔。しかし、優しいだけではないと私は思った。優しい眼の強さ、しわの奥に強い
意志が見える。人に手を差しのべる力の優しさというべきか。
■勉強への底力
多くのハルモニが「女に学問はいらない」と文字を教えられず、日本の学校では差別で勉強どころではなく、その学校さえ貧しさの
ため通うこともなく、ハングルもあいうえおも知らずに育った人々が多い。ある少女は半年に一度の工場の休みに、家族に会いに外出、
字が読めず電車に乗れず、何度も同じ道を往復、一日が終わった記憶を語る。雑踏にひとりぼっちの少女の焦りと不安を思い、
胸が痛くなった。
この人々は厳しい労働後の夜間学校で、総連結成後の成人学校で、驚くべきは70歳になっても、祖国の言葉だけでなく日本語、
次にはローマ字さえこなす勉強の底力に驚かされた。元ハンセン病患者の金さんはハングル点字の舌読を学んだ歌人。指に麻痺が
来て点字習得ができなくなった後の努力という。
学びのエネルギーはどこから生まれるのか。それは自分自身を取り戻す作業だったのではないか。与えられなかったことへの恨みは
聞かれない。奪われたものを取り返す闘い、文字を知ること自体、否定された民族を取り戻す闘いだった。思えば、私は自分自身を
全否定された経験がない。どんな苛酷な人生か、それを知ることなしに朝鮮人と向き合うことができないのではないか、と思い知らされた。
(中略)
しかも、それぞれが地域社会においても存在感を発揮している。たとえば「枝川の歴史の生き証人」金敬蘭さん(78)。東京朝鮮
第2初級学校のオモニ会会長を46年間務め、学校と子どもを守る闘いの最前線に立ってきた。地域の誰からも尊敬される存在。
本書のタイトルは、金さんが地元の日本人から送られた「あんたをいつでもお天道さんが見守っているからね」という言葉に由来する。
(中略)
あとがきで著者は、「人間の一番初めにあるべき知性は人様を思いやる心根のやさしさ」とする作家・石牟礼道子さんの言葉を
引き、「まさしくそんな『知性』を身につけた女性たちだった」と書いている。私自身、読みながら何度も居住まいを正した。高潔な精神
が行間から立ちのぼってくるようだった。
■若い世代の糧に
翻っていえば、そのような「知性」とは、「在日特権を許さない会」などの品性とは対極に位置するものなのだと思う。「高校無償化」
の問題もそうだ。偏見を煽りたてる輩たちの掛け声の、なんと薄っぺらいことか。
だからこそ、なおさら民族教育に対する思いの強さが印象に残った。受難の歴史を体現してきたそれぞれの言葉を通じ、学びの場
の重みを再確認させられた。本書は今年巣立っていく全国の朝鮮高級学校の卒業生たちにプレゼントされるという。「若い世代に
1世たちの生きざまを引き継いでほしい」と著者は期待する。「無償化」を求める街頭行動などにも積極的に参加してきた生徒たちに
とって、大きな糧となるに違いない。
文章の端々に相手への尊敬と、優しい眼差しがにじむ。添えられた写真がまたいい。みな自然体で柔らかな表情を向けている。
残念ながら登場する34人のうち3人が鬼籍に入った。著者にはますます精力的に、この重要な仕事を続けてほしいと思う。
(栗原佳子・ジャーナリスト)
ソース(朝鮮新報) URLリンク(www1.korea-np.co.jp)
前スレッド(★1が立った日時 2011/02/25(金) 21:34:17.51)
スレリンク(news4plus板)