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「日本から学ぶ」というタイトルを見た時は一瞬、「ほお、まだ韓国は日本を手本にしているのか」と思った。
韓国の有力紙「朝鮮日報」が昨年12月に掲載した連載企画のことである。同紙がLG経済研究院と共同でおこなった取材の
産物だという。だが、中身を読み始めて、すぐに勘違いに気づいた。見出しもよく見れば、「失われた20年、日本から学ぶ」であった。
企画の狙いは、日本の成功から学ぶことではない。日本の停滞を分析して、そこから教訓を得ることだ。
少子高齢化、若者の就職難、大型団地の空洞化、外国人労働力受け入れなどのテーマごとに、現場の取材と、統計分析が
組み合わされている。
高齢化が経済に及ぼす影響のくだりでは、森永製菓が2013年にも閉鎖する方針の塚口工場(兵庫県尼崎市)の描写から
はじまり、子供人口の減少にともないチョコレートの販売量が減ったという数字があげられている。住宅問題では、大阪府のベッド
タウン、千里ニュータウン、外国人学生の受け入れについては、立命館アジア太平洋大学(大分県別府市)で現地取材している。
韓国のマスコミの日本に関する報道は、ともすれば歴史認識問題にからんで観念的でパターン化した批判を繰り返すきらいが
あるし、その一方で最近までは、日本の国力を誇大に表現する傾向があった。この全5回の連載企画は、そうした傾向から脱皮
していた。
朝鮮日報が、このような本格的な企画に取り組んだ背景にあるのは、「明日はわが身か」という危機感だ。近年、韓国の出生率は、
日本を下回っている。実際、朝鮮日報の企画は、韓国の少子高齢化への対策が不十分であるとも指摘していた。
最近、日本では、サムスンを筆頭とする韓国企業の躍進など、韓国の元気さを強調する記事が目立つ。たしかに、韓国は様々な
分野で前進を続けている。
しかし、韓国が成功に酔いしれているかといえばそうではない。政官界、学会、マスコミと分野を問わず、韓国人の知人たちと会話
して感じるのは、韓国の躍進がいつまでも続くものではない、という冷静な認識をもっていることだ。あるアジア通の韓国人外交官に、
今日の韓国の活力はどれぐらい続くと思うかと聞いたら、「うーん、あと10年か20年」と答えた。ここらへんが相場観のようだ。
心ある韓国人は、全速力の発展から、安定した持続的な繁栄にどうしたら移行できるのか、という問題意識を持っている。そして、
日本を知ることで、何かの手がかりが得られるのかという関心を抱いてもいる。今回紹介した朝鮮日報の連載記事は、その表れと
言える。
ソース(読売新聞、調査研究本部主任研究員 森千春氏)
URLリンク(www.yomiuri.co.jp)