11/01/30 22:40:31
試合ごとにヒーローが生まれ、アジア王者に返り咲いたサッカー日本代表。決勝で貴重なゴールを決めたのは、交代出場の
李忠成(り・ただなり)選手(25)。東京都西東京市出身の在日コリアン4世だ。活躍の陰に、父と交わした約束があった。
「お父さん、やったよ!」
貿易業を営む父・鉄泰(チョルテ)さん(53)の携帯電話に李選手から電話がかかってきたのは、試合終了後まもなくだった。
興奮がおさまらない様子の息子を、父はねぎらった。「頑張ったかいがあったな。神様がボールくれたな」
李選手は今大会、初戦に交代出場したが、その後は出番がなかった。韓国との準決勝の前、李選手から鉄泰さんに電話が
あった。
焦りをのぞかせる息子に、父は「頑張らんと、次呼ばれへんで。あいつがいたらプラスになるって仕事しないと」と励ました。そして
念を押した。「難しく考えるな。簡単にプレーしろ」
鉄泰さんが「頑張れ」というのは、サッカーだけの意味ではない。日本と朝鮮半島の間で生きてきた者としての思いがある。
「我々は周りと同じレベルでは認められない。いい時はいいが、だめだと必要以上に批判される」
李選手は以前、鉄泰さんと同じ韓国籍だった。韓国のユース代表の選抜合宿に参加したこともある。だが言葉は通じず、
「半分日本人だろ」という壁も感じた。日本国籍を取得したのは4年前だ。
北京五輪の日本代表入りを目指して日本国籍を選んだ時、親子は話し合ったという。「堂々と本名を名乗りながら、日本の
ために頑張る在日がいてもいい。一つでも在日の新しい歴史をつくろう」
少ないチャンスをものにした息子を、鉄泰さんは誇らしく思う。「小さい時から、頑張って頑張ってポジションを取ってきた。
一番地獄を知っているやつだ」と。「簡単にプレーを」というアドバイスも実践してくれた。「ボールをいったん止めたりしてたら
入らなかったな」
勝利の後、李選手は朝7時まで眠れなかった。パソコンの動画サイトで自分のゴールを繰り返し見続けたという。
ブログも書いた。「正直眠れません。僕の人生において最高の1ページを築けた日だったから」「『俺がヒーローになるんだ!』と、
自分に言い聞かせながら常に自分を信じ続けピッチに入りました」
そして、スタッフやサポーターとともに「僕を常に支え続けてくれてきたアボジ・オモニ(韓国語で父母の意味)」に感謝の言葉を贈った。
「みんなの想(おも)いを乗せたシュートでした」
ソース(朝日新聞) URLリンク(www.asahi.com)
写真=アジアカップで優勝を決め、長谷部(17)と抱き合う李忠成
URLリンク(www.asahicom.jp)
写真=試合を振り返る李鉄泰さん。早朝、地元の青年会議所の仲間から胡蝶蘭が贈られた
URLリンク(www.asahicom.jp)