11/01/26 21:19:51
大晦日から元旦に降りしきった大雪は「山陰豪雪」、「ゲリラ豪雪」などと称され、国道9号で車1000台が雪中缶詰めとなったことで全国に知られた。
自然の脅威は不意の来客のようになかなか予測がつかないものではあるが、本年1月8日、盛況裡に終えた鳥取民団新年会から間がない
民団中央新年会の当日(11日)、鳥取民団に一葉のハガキとカッターナイフの刃がおまけ付きで送られてきた。
ハガキは、「オイ!!何が参政権だ おめら早く半島に帰れや、日本から出てイケッてんだよ」という罵倒で始まる脅迫文であった。
文中には「…そこに火をかけたる、夜中な…」ともあった。
忘れるべくもない事件があった。2008年2月初旬、粉雪の舞う未明、私の生業である(屑屋を営む)工場から不審火が発生、
糊口の糧である設備を破壊され辛酸をなめた。犯人はいまだ捕まってはいない。
その前年の07年夏から初秋にかけ、鳥取県琴浦町の「風の丘」日韓友好交流公園に、韓日交流を記念して建てられた石碑の碑文から、
日本海(東海トンヘ)とあるうち韓国側の呼称が削除されていた。《右》の人士の指摘を受けた町側が削除したものだ。
私は原状回復を基本とした二度の抗議とともに、地元マスコミにあるべき韓日交流の論陣をはり、新聞紙上では「日本会議」の代表たちの
意見と対抗するように取り上げられ、インターネットの2チャンネルでは激しくバッシングをあび、一躍有名人(?)となった。
その年11月には「第1回永住外国人地方参政権シンポジウムin鳥取」を立ち上げた。「参政権シンポジウム」は毎年開催し、
咋年12月4日には「韓国併合百年と在日のこれから」とサブタイトルを打ち、第4回目を実施した。
鳥取のみならず福井、岡山、東京などから約150人が参加した。
基調講演を劇作家の平田オリザ氏に、現況報告を民団中央参政権本部の徐元喆事務局長にお願いし、
パネラーとして一橋大学名誉教授の田中宏氏、島根大学名誉教授・愛知学院大学大学院教授の岡崎勝彦氏、
在日弁護士会会長の殷勇基氏が名を連ねた。私はパネラーとコーディネーターを兼任した。
明治近代以降の韓日関係と韓国併合によって生み出された在日の歴史を再検証し、
地方参政権問題に至る人権と国際化の命題をいっそう掘り下げる討議となったと自負する。
植民地支配とは国家による巨大なハラスメントである。還るところのない在日は、いまだにこのハラスメントにさらされている。
世代を超えて繰り返される民族的な憎悪は、在日の魂を傷つけるのみならず、日本人自身の心を腐食させずにはおかない。
この国は、植民地支配の病理を治癒し得ていないがゆえに、他者を拒絶し内向して門扉を閉じ、
「ガラパゴス化」(ガラパゴスに失礼だが)と呼ばれる「鎖国状態」に突き進んでいるかのようだ。
■在日排除では
少子化、人口減による国力疲弊を危惧し、数百万人単位の外国人導入や東アジア共同体の構築が繰り返し提言されてきた。
しかし、100年の住民たる在日を使い捨ての電池のように扱いながらのお題目を誰が信じよう。
悲しむべきは、ハイマートロス(故郷喪失者)として、
せめてもの寄る辺を生地・居住地に求める在日に「チョーセンへ、半島へ帰れ!」と罵詈を浴びせ刃物を送りつけるような、
日本近代が孕む病理だろう。私が不在の拙宅では、家人が卑劣な暴力におびえ、まんじりともできなかった。
併合100年の昨年初頭、参政権運動は、20年近くの宿願達成まであと一歩、との期待に包まれていたが、
春霞にぼやけてしまったかのようだった。しかし、決して消えることのない松明だ。まして、脅しに吹き消されるものではない。
(2011.1.26 民団新聞)<民論団論>“日本の病理”を悲しむ 民団鳥取本部団長 薛幸夫
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