10/12/29 05:39:39
全通したばかりの東北新幹線で新青森駅へ。さらに在来線と津軽鉄道を乗り継ぐ。
うまくいって1時間半ほどで五所川原市金木(かなぎ)町に着く。太宰治のふるさとである。
太宰の生家は津軽の大地主だった。高さ4メートルのれんが塀で囲まれた和洋折衷の重厚な建物は、
戦後人手に渡り、斜陽館として保存されている。
敗戦は日本をいったんゼロにリセットした。それから65年後の今年、
日本を覆うのは、やり場のない斜陽の感覚である。
雪に覆われた巨大な館の前でみな立ちすくんでいるかのようだ。
■目まぐるしい盛衰
1945年にゼロ歳の日本ちゃんが生まれたとしよう。
11歳で「もはや戦後ではない」と初等教育を終え、若々しく成長し、
19歳で早くも五輪を成功させ国際デビューする。伸び盛りの25歳の時には万博も開いた。
石油ショックなどがあって成長の速度は落ちたが、30代になると一億総中流を自任した。
40歳で対外純資産が世界1位になった。
さすがにもうけすぎだと言われて、プラザ合意で為替レートが一変しバブルが始まる。
40代半ばのころ東西冷戦が終わり、その後バブルが崩壊する。
50歳の時に阪神大震災とオウム事件に遭った。そのころから病気がちになり、
小泉改革の劇薬も効かず65歳の今にいたる。
このまま老衰するわけでもあるまいが、人の一生に等しい短い時間で目まぐるしい盛衰を経験しつつある。
今年おそらく国内総生産で世界2位の座を中国に譲った。
鶴のマークが海外への希望の象徴だった日本航空は破綻(はたん)した。
大学生の就職は超氷河期。所在不明の高齢者は続出し、自殺者は13年連続で3万人を超えそうだ。
国民の期待を背負って政権に就いたはずの民主党の迷走は、日本の立ち位置を皮肉な形で示してくれた。
変化を掲げたオバマ米大統領は、巨大資本の呪縛や保守派の攻勢で身動きがとれない。
中国は拡大する経済に見合った軍事力への渇望や、広がる格差が生む動揺を抑え切れていない。
■人口減社会の行方
それぞれに矛盾を抱え、支配力を失っていく東の大国と、力をつけていく西の大国とどう付き合っていくのか、
日本の姿勢は定まらない。インドや韓国の台頭もあって、アジアでの存在感は希薄になるばかりだ。
続きます
URLリンク(www.asahi.com)