10/12/27 14:50:52
12月24日、東芝は半導体のシステムLSI(大規模集積回路)の生産を
韓国・サムスン電子に委託する方向で交渉していることを明らかにした。
LSI事業は、巨額の開発投資が必要で収益性が低いため、
同社は、回路図の設計に集中して生産は縮小し、コストを抑える方針である。
システムLSIは、大量情報の演算処理やデータ保存などの機能をひとつのチップにまとめた半導体であり、
デジタル機器や自動車などの制御に欠かせないものである。
顧客のリクエストに応じて多品種少量生産を行うため、メーカーは利幅を取りにくい。
半導体回路の微細化を受け、新工場の建設に3,000億円規模の投資が必要とされることも負担である。
東芝の半導体事業は、利益の大半を、パソコンのメモリーカードなどに使うフラッシュメモリーによって稼いでおり、
低迷するLSI事業は従来から売却または再編の対象であった。
また、ゲーム機や高級テレビ向けシステムLSIを生産する長崎工場はソニーに売却を検討中で、
大分工場は世界的に需要が高まっている画像センサー専用の工場に転換予定と報じられている。
東芝は、システムLSIへの設備投資を削減することで、
スマートフォン(高機能携帯電話)向けなどに急速に需要が拡大している次世代メモリー事業に資源を集中し、
一方、サムスンは豊富な資金力を武器に競合半導体メーカーからの受託生産を進めている。
東芝からの生産委託はその一環である。
■前向きな面が強い不採算事業の整理
1980年代半ば、半導体は「産業のコメ」と呼ばれ、東芝、富士通、日立、NECなど
日本企業が世界市場で5割以上のシェアを誇っていた。
ところが、市場構造は大きく変わり、2009年には、米インテルとサムスン電子二社で世界の21.7%のシェアを占め、
東芝は世界三位の売上といっても、シェアは 4.7%に過ぎない。
今回の事例は、落ち目の日本企業が成長するアジア企業に不採算事業を売却し、
買収した企業はますます規模の利益を追求すると解釈されることが一般的なのだろう。
しかし、東芝の事例からは、グローバル市場の変化にうまく対応し、
日本企業として理に適った行動をしているという違った面が見えてくる。
続きます
WSJ日本版 2010年12月27日
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