10/11/20 19:59:43
長岡市は、上海万博出展は鯉を最終的に処分するという前提で行われ、契約書にもそう書かれている
と説明する。殺処分は受け人れざるを得ない条件だったというのだ。だが、野上氏らは甫の説明を否定
する。
「殺すという前提はありませんでした。契約書‥も交わしていません。ただ、日本に持ち帰れないこ
とはわかっていましたので、中国に残して、中国の人たちに可愛いがってもらえればよいと考えていた
のです」
こう語りつつ、野上氏は言う。「かといって、私らは毒を入れた中国人を非難する気はありません。
彼らは命令されたんでしょう。あとで彼らは電話をかけてきて、申しわけないと言ったそうです」
■自衛こそ合理的な解決
謝罪の言葉を野上氏が本人たちから聞いたわけではなく、通訳から聞いたそうだ。客観的に見て、中
国の官僚が政府の指示で行ったことを謝罪するとは考えにくい。だが、野上氏も高野氏も伝え聞いた言
葉を額面どおりに受けとめる。
「実は一連の様子はビデオにも写真にも撮ってあります。我々で、動画を公開するのがよいのか悪い
のか、話し合いました。理事(野上氏)は公開しない方がよいとの考えでした。小さな尖閣問題みたい
ですね」と高野氏は苦笑する。野上氏も語った。
「クスリを水槽に入れられた場面などを撮りました。けれど、もうそんなもの、見たくもない。思い
出したくもない。大事な鯉を殺される映像を外に出して、摩擦をおこして中国と喧嘩したくない。我々
は中国と親交を深めていきたいと願っているし、彼らもやがて、自分たちのやり方が相当おかしいと気
づくでしょう」
新潟の人々のこの優しさが中国人に通じる日は来るのか。評論家の加瀬英明氏が石平氏との共著、
『ここまで違う日本と中国』(自由社)で指摘している。「広大な国で、第二次大戦前の中国には、上
海をはじめとして、多くの大富豪がいたのに、今日にいたるまで、西洋美術館が一つもない」 彼らは
洋楽は好むが、美術においてはゴッホもセザンヌもルノワールも、広重も歌麿も横山大観も捕方志功も、
認めない。中国美術以外に価値を認めないと加瀬氏は喝破する。
美しい姿で泳ぐ鯉の頭上に毒を振り撒くのは尋常ではない。この異常さは、日本人の感ずる鯉の「美
しさやかわいらしさ」を感じとれないゆえではないのか。小さな生物への愛着を待ち得ないからではな
いのか。中国人の変化を期待して、鯉を死なせた悲劇を忘れるより、逆に未来永劫記憶して、二度と同
じ目に遭わないように自衛することこそ、合理的な解決だと、私は思うのである。
以上です