10/11/15 21:51:23
韓米自由貿易協定(FTA)の追加交渉は物別れに終わったが、今回の交渉で韓国が100%譲歩したとしても、韓国
の自動車市場には全く変化は見られないだろう。品質や燃費で劣る米国車は韓国で人気がないからだ。ソウル
市内を走る輸入車は大幅に増加したが、米国車はなかなか見当たらない。BMWやベンツ、アウディ、トヨタ、
ホンダなどの欧州車や日本車に押され、苦戦を強いられている。今年初めから10月までに、韓国で販売された
ドイツ車は4万台を上回ったのに対し、米国車は約6000台にとどまった。
現代自動車と起亜自動車は、今回の交渉には特別な関心を示さなかった。要するに、韓国市場では米国車をライ
バルと見なしていないのだ。米国車の競争力からすると、韓国が「あなた方の意向をすべて聞いてあげましょう」
と気前よく応じることも考えられた。
ただし、李明博(イ・ミョンバク)大統領にも、米国の事情を聞き入れたいとの気持ちはあったはずだ。かつて、
多くの米国の若者が韓国戦争(朝鮮戦争)で犠牲になった。そして戦後、貧しさと飢えに苦しむ韓国に対し、
衣服や小麦粉、粉ミルクなどを援助してくれたのが米国だった。さらに、韓国は米国から借りた資金で産業化
を成し遂げた。第二次世界大戦以降、米国が援助した国家のうち最も成功したのが大韓民国だ。今や世界13位
の経済大国に発展し、新興大国の一員として、主要20カ国・地域(G20)首脳会議を開催するまでになった。
韓国の大統領が米国や日本、中国、ドイツ、フランスの首脳に囲まれて世界の未来を論じ、世界の貧しい国々
を支援しようと訴える堂々とした姿を、これまで想像できただろうか。そう考えると、現在のように米国が困難
に直面し、われわれに援助を求めてくれば、その手を振り払わずに、救いの手を差し伸べるのが国際政治を越
えた世の中の道理ともいえる。
だが、今回のFTA追加交渉で米国は、三つの過ちを犯した。韓国が助けようにも助けにくい状況をつくり上げ
たのだ。まず、国家間の交渉とは、両国の国民の目の前で進められるものだ。国民が計算機を手に交渉の過程
を見守る中で、米国は韓国側に一方的な譲歩を要求した。「6対4」のゲームは可能でも、「9対1」では折衷で
はなく強奪と受け取られる可能性がある。
また、「G20首脳会議前」という期限を主張したことも過ちだった。米国はG20首脳会議で、両国首脳による交渉
妥結宣言を発表したいとの思惑があったようだ。仮に、李大統領とオバマ大統領が「9対1」の内容の協定文を
読み上げ、笑顔で抱き合う姿を韓国の国民が目にしたら、どんな思いを抱くだろうか。
米国が犯したもう一つの過ちは、「牛肉問題」で韓国を脅迫したことだ。米国産牛肉の輸入は本来、FTA協定文
には含まれていない項目だ。それにもかかわらず米国は、今回の交渉で自動車と共に牛肉問題というカードを
ちらつかせた。初めは自動車交渉だけを取り上げていたが、協議が難航すると、土壇場で「生後30カ月以上の
牛肉の追加開放」を訴えてきたのだ。「牛肉」を脅迫の材料としてテーブルの下に隠しつつ、いきなり持ち出
してきたわけだ。
現在、韓国の国民は米国産牛肉を多く口にしている。韓国で米国産牛肉の販売が再開されてから2年が過ぎたが、
検疫では何ら問題は起きていない。米国人は、年間700万頭以上に及ぶ生後30カ月以上の牛肉を食べている。
このため、韓国が永遠に輸入を禁止する理由も見当たらない。
だが、米国が韓国に牛肉の追加開放を望むのなら、別途の交渉を通じ、「ギブ・アンド・テイク」の形で議論
するのが通商外交の原則であり、正しいやり方だ。米国が今回、「韓国の狂牛病(牛海綿状脳症〈BSE〉)騒動
の悪夢」をひそかに利用し、自動車交渉を有利に進めようとしたならば、それは大国らしからぬ姿といえるだ
ろう。
尹泳信(ユン・ヨンシン)経済部長
朝鮮日報 2010/11/15
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