10/11/11 13:58:19
中国によるレアアース市場支配が、世界の最重要政策課題になりつつある。だが、何をすべきなのか。そしてこれは
どの程度大きな問題なのか。
今週末に韓国で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議を前に、クリントン米国務長官は世界中の業界団体と
同様、この問題を提起している。国際社会がこの会議で中国にレアアース輸出増を迫るとの見方もある。また、米国、
ドイツ、日本が中国の輸出割当枠について世界貿易機関(WTO)に提訴するとの指摘もある。日本の需要家は
既に競って代替供給先を探している。
しかし、ハイテク製品や軍需品の原料としてレアアースがどんなに重要であったとしても、肝心なのは、年間20億ドル
程度の規模しかないこの業界が、今回の騒ぎに値するかどうかだ。値するとして、対立が最善の戦略なのか。
「レアアースの故郷があなたを歓迎」と書かれたモニュメント(中国・内モンゴル自治区)
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米資源中堅モリコープのマーク・スミス最高経営責任者(CEO)は10日、香港でウォール・ストリート・ジャーナルの
インタビューに応じ、中国の税関が同社の書類の精査を強化しており、出荷手続きが「ほんの数日」長くなっていると
語った。
スミス氏によると、中国政府が密輸業者を取り締まるなか、問題とされている件は「中国の港からの輸出が合法的な
輸出だということを確認する意図」である公算が大きい。税関の新たな質問は、割当の証明や輸出品の価格に関連
した内容という。
スミス氏によると、世界は中国に代わるレアアース生産会社を動かすことを優先すべきである。たとえば、豪ライナスは
11年、モリコープは12年に生産を再開する予定だ。
石油部門のような古い業界からバッテリー生産のような新しい業界までが積極的に答えを模索するなど、世界の動き
は既に急速に活発化している。有力アナリスト2人の合同プレゼンテーションによると、中国国外でのこうした生産が
始まれば、2015年には供給が需要を2万トン前後上回る。
英ロスキル・インフォメーション・サービシズのジュディス・チェグウィデン氏と豪インダストリアル・ミネラルズのダドリー・
キングスノース氏はこのプレゼンテーションで、世界の需要が10年の12万5000トンから15年に18万5000トンに増えるとの
見方を示した。
カリフォルニア州のある投資家は、このプレゼンテーションについて、こうした数字は中国のレアアース輸出管理が世界の
産業発展を抑えるという考えが、ほとんど誇大であることを示唆すると述べた。
米国を拠点とするあるレアアーストレーダーの業界短期見通しは強気だ。最近のレアアース価格上昇について、
「行き過ぎだが、まだ途中だ」としている。
中国がどう出るか不透明なために、需要が単に遅れているとの見方もある。そのため、石油精製のような業界で
代替技術を求める機運が高まる一方、磁気冷凍のような新技術の開発が遅れかねない。
グリーンランドでレアアースの生産拠点を開発しているハドソン・リソーシズのジェームズ・トゥーアー社長は「需要が
減っている事実を重視していない。需要は単に、供給が確保できないために減っているだけだ」との考えを示した。
生産にこぎ着けるまでには数年かかる。オーストラリア証券取引所のウェブサイトに10日掲載されたライナスの
ニコラス・カーティスCEOのプレゼンテーションは、生産に要する労力の課題を強調している。同社のあるプロジェクトでは、
エンジニアリングに延べ30万時間、建設に延べ400万時間の工数を要する。
モリコープのスミスCEOは、「ほぼすべての製造部門の根底にある」レアアースについて、G20の場であろうとなかろうと、
リーダーが―闘争的ではなく協力的な方法で―議論する必要があると語った。
一方、WTOに訴えた場合、判定に「数年」を要する可能性があるとし、「現在われわれが抱えているのは喫緊の
問題だ」と述べた。
記者: James T. Areddy
ソース(ウォール・ストリート・ジャーナル) URLリンク(jp.wsj.com)