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金網の向こうに広がるのは草が生い茂る空き地だった。神奈川県鎌倉市の鶴岡八幡宮から少し離れたところに
ある東勝寺跡。北条高時が一族とともに自害し鎌倉幕府が終焉(しゅうえん)(元弘3年、1333年)を迎えた地と
される。
鎌倉時代といえば、元と高麗が2度にわたって日本に攻め入った元寇(げんこう)が浮かぶ。その元寇が現代に
よみがえってきたような思いにかられることがある。激しさを増すアジア勢による日本市場攻略の動きである。
中国家電大手のハイアールは高機能の家電製品を投入し、日本での事業展開拡大を目指している。韓国勢
ではサムスン電子が新型スマートフォン「GALAXY(ギャラクシー)S」を投入、LG電子は日本の薄型テレビ市場に
本格参入する。そしてインドの製薬会社は価格競争力で勝る後発薬で攻勢を強めている。ここ2カ月弱の間に
産経新聞の僚紙フジサンケイビジネスアイなどで報道された記事をざっと拾っただけでも、こんなにある。
これまでは日本の消費者の目が厳しく、多くが失敗し、撤退を余儀なくされていた。仏の流通大手カルフールしかり、
韓国の現代自動車(乗用車販売)しかり…。今回、再参入するLGも平成17年に日本市場に小型テレビを投入
したが、販売不振から3年後に撤退した過去を持つ。
ならば、今回も同様なのだろうか。信州大学の真壁昭夫教授は「韓国企業については日本に技術力が追いついて
きており、日本企業のデザイン力、商品開発力といった優位性がなくなってきている」と指摘、日本市場で成功する
可能性があると予測する。
元寇では当初、一騎打ちを作法としていた日本の武士は集団戦術を取る元側に劣勢を強いられた。だが、2度目
の戦いでは、日本側は堅牢(けんろう)な防衛体制を築くなど、さまざまな戦術を用いて元側を苦しめたらしい。日本は
暴風雨という「神風」のおかげで勝利を収めたという説が強調されがちだが、戦術の進化も勝因の大きな部分を占めて
いたように感じる。
「現代版元寇」もまた、官民一体という集団戦法で攻め込んできている。対抗するには戦術の進化、つまり日本企業
にはアジア勢にできない商品を生み出す開発力、政府には日本企業の競争力を高める強力な後押し策が必要だ。
神風を待っていては、今度こそ敗北を喫することになる。
ソース(MSN産経ニュース、フジサンケイビジネスアイ編集長・吉田憲司氏)
URLリンク(sankei.jp.msn.com)