10/11/05 00:40:17
【石平のChina Watch】失業者2億人、不動産バブル…中国の悪夢
10月21日、中国国家統計局は2010年7~9月期の国内総生産(GDP)が9.6%増加した、と発表した。
それは、4~6月期の成長率より0.7ポイント下回った数字である。
今年に入ってからの成長率の推移を見てみると、第1四半期(1~3月)は11.9%の高い数値を記録したが、
第2四半期(4~6月)になるとそれが10.3%に減速し、第3四半期の7~9月期にはさらに鈍化して9.6%に下がった。
成長の減速と同時進行的に起きているのはインフレの亢進(こうしん)である。
去年の11月に0.6%だった消費者物価指数(CPI)は今年に入ってから上昇する一方だ。
5月にはそれが3.1%に上がり、中国政府が「インフレ警戒線」として設定している「消費者物価指数3%」の
ラインを突破してしまい、9月にはCPIはさらに上がって3.6%となった。インフレの傾向は強まってきている。
中国人民銀行の周小川行長(日銀総裁に相当)は10月22日、経済関係のフォーラムの席でこの問題に言及し、
「中国ではインフレのリスクが高まっており、われわれは厳しい試練に直面している」
との重大発言を行った。中国政府が抱く危機感の表れであろう。
今年に入ってからの中国経済は、成長率の継続的下落と同時進行的に
インフレ率が上昇しつつある、という現象が起きている。
「成長率が低下しながらのインフレ」は、経済学的に「スタグフレーション」と呼ぶが、どこの国の経済にとっても、
それは大変深刻な事態である。成長率の低下は当然収入水準の下落や失業の拡大を意味するから、
収入が減って失業が拡大している中で「インフレ=物価の上昇」となれば、一般庶民の生活が大いにおびやかされる。
特に中国の場合、ギリギリの線で生活している2億人の失業者や、分厚い貧困層が存在している
状況下での本格的なインフレの到来=物価の大幅上昇は、社会的大混乱の発生を招きかねない。
インフレの亢進を食い止めるために、中国政府は現在の金融緩和から金融の引き締め策に転じざるを得ないが、
彼らはいまだに、政策の転換を断行する決心がついていない。その理由はどこにあるのか。
去年の09年から、中国政府が史上最大の金融緩和政策を実行して未曾有の流動性過剰を生じさせた結果、
莫大(ばくだい)な投機資金が不動産市場に流れ込み、史上最大の不動産バブルを膨らませた。
今年に入ると、それをどう処理するのかが、中国政府にとって頭の痛い難題となっている。
その際、もし政府がインフレ退治のために思い切った金融引き締め政策に転じてしまった場合、副作用として、
金融緩和によって支えられている不動産バブルの崩壊は避けられない。そしてバブルが弾けてしまえば、
不良債権の大量発生・経済の冷え込み・成長率のさらなる低下・失業の拡大などの連鎖反応が
やってくることは火を見るよりも明らかだ。中国政府にとって、それはまた、
社会と政権の安定を根底からひっくり返す危機の到来を意味する以外の何ものでもない。
つまり今の中国政府は、実に深刻なジレンマに陥っているのである。
インフレの亢進を容認してしまえば社会的大混乱が起きかねないが、
インフレを退治しようとするならば不動産バブルの崩壊を覚悟しなければならない。
そしてどっちみち、中国経済は大変な状況になっていく以外にない。
インフレで死ぬのか、バブル崩壊で死ぬのか、重大局面の到来は目の前に迫ってきている。
◇
【プロフィル】石平
せき・へい 1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。
民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。
ソース:MSN産経ニュース 2010.11.4 09:54
URLリンク(sankei.jp.msn.com)
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