10/10/30 15:35:25
■海洋国家のお寒い現実
昭和53年(1978年)まで尖閣周辺の漁業水揚げは約15億円に上ったという。いまもサワラや本マグロ
のいい漁場だが、中台の漁船を恐れて地元漁民は全く出ていない。ブイは盗まれるハエナワは引き裂かれるで
「誰も行かなくなった」からだ。
地元でいま一番、懸念されているのは船長釈放で中国側に与えた安心感だという。「捕まってもどうせ釈放さ
れるというメッセージだ」。また漁民らは「われわれが中国側に拿捕(だほ)された場合どうなるのか」と政府
への不信感を募らせている。
最前線の海上保安庁にも問題が顕在化してきた。付いた補正予算は84億円。1000トン型巡視船2隻、修理
1隻、ヘリ4機などだが、いずれも来年度予算の前倒しに過ぎず、巡視船は老朽船との相殺のため純増とはな
らない。
尖閣問題の沸騰で現在、尖閣周辺は瀬戸内海をのぞく関東以南の管区から優先的な応援体制で警戒に当たって
いる。だが「この体制は年内が限界」という声が強い。ドッグ入りの船などの予定をすべて先送りしての無理
な体制を組んでいるほか、他の管区にしわ寄せが現れ、警備手薄の海域が生まれているからだ。
海洋国家の日本は排他的経済水域(EEZ)が膨大に広い。447万平方キロメートルで中国のEEZ90万
平方キロメートルの5倍近くある世界でも5指に入る海の国なのだ。その警備をつかさどる海上保安庁の人員、
装備は人員12000人、巡視船121隻、巡視艇234隻、航空機27機などであまりにも不十分。専門家
は巡視船の倍増が必要と指摘してきた。
「海洋国家としての装備の不足に加え、尖閣問題で明らかになったように、離島防衛に関して国家としての明確
な指針が示されていないことが一番の問題だ。次に中国、あるいは台湾漁船が領海内に入ったらどうするのか。
逮捕してもまた釈放するのか。海保は対応に苦慮している」と指摘するのは、海上保安体制に詳しい山田吉彦・
東海大学教授だ。
石垣市はビデオ問題についても「現場の人間として、国民に向けた全面公開を政府に求めていく」(中山市長)
としている。尖閣諸島に領土問題はないという「口先外交」に一石を投じようとの「石垣外交」に注目したい。
以上です