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◆言うべきこと言える外交を
これによって、今後、日本の外相が中国に対して言いたいことが言えず、言うべきことが言えなくなってよいので
あろうか。外相がそうなれば、大使、局長など、日本外交の担い手たちはみな、右へならえするようになるであろう。
中国側のご機嫌を伺うようになるであろう。日本外務省の中国サービスには、もともと残念ながらそのような気配が
久しく見られたことは、否定できまい。中国側ににらまれたら、日本外務省のなかで中国専門家としての栄達を
制約されるというのである。
この際、日本外交の問題点として、ついでに指摘しておけば、中国以外の国との関係でも、日本の大使たちは、
相手国の心証を気にして、その国の首脳にすり寄る気風がある。もとより外交官たるもの、いずれの国の外交官で
あれ、任国の首脳の信頼を得ることは重要である。しかし、最重要な任務は、それではないはずである。
問題は、わが国における大使たちの勤務評定の基準が、ことなかれ主義に流れていることにある。たとえ言わな
ければならないことであっても、それを言って、相手国との関係をギクシャクさせると、減点となり、無難に徹して、
いわゆる「友好関係」に貢献すると、名大使と称される。それが、戦後日本外交の日常的な原風景であった。
中国が「前原外相外し」ともいえる大胆不敵な動きに出てきた背景には、このような戦後の日本外交の抱える
構造的な弱さがあると言わざるを得ない。前原外相には、中国側の牽制(けんせい)にひるむことなく正論を言い
続けてほしい。と同時に、日本外交を担う現役の外交官諸君には、腹を据えて、日本の国益のために、言うべき
ときに、言うべき相手に、言うべきことを言う勇気を持ってもらいたい。(いとう けんいち)
終