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SBSテレビで放送中のドラマ『人生は美しい』は、同性愛を扱って論議を呼んでいる。だが、同ドラマの本物の
主人公は済州島ではないかと思う。ドラマに登場する済州島の風景は、胸がときめくほど美しい。海外の有名
観光地にも劣らぬほどきれいで品があり、実に素敵だ。
地方が登場するドラマは多い。だが、主人公たちは就職や進学でソウルに出ていくため、地方は思い出の故郷
として扱われるにすぎない。さらに地方は、よりよい成功を収めるために離れなければならない場所、ともす
れば人生における「足かせ」のように描かれる場合もある。だが、『人生は美しい』の登場人物にとって済州島
は、夢と希望に満ちた生活の舞台だ。リゾート会社の役員をはじめ、ダイバー、医師、料理研究家、ペンション
のオーナー、食堂の主人など、ソウルを舞台にしたドラマに負けず劣らず多種多様な職業が登場する。
「ドラマ王国」と言われるほど韓国には数多くのドラマがあふれているが、こうした「地方中心型」のドラマ
は極めて少ない。地方をドラマの舞台にするのは容易なことではないからだ。出演者や制作スタッフがソウル
に居住しているため、地方での撮影は時間や制作費の面でも不利となる。ソウルを中心と考える脚本家やテレビ
局にとっても、勇気のいることだ。地方は、時代劇の舞台としては頻繁に使われるが、これがむしろ地方にと
って負担になる場合もある。テレビ局は時代劇の撮影に臨む際、地方自治体から数十億ウォン(数億円)もの
制作費補助を受け、ドラマの撮影所を作る。地方自治体は観光客の増加に大きな期待を寄せるが、人気が冷める
と多くの撮影所は廃墟と化してしまう。撮影のために建てられた即席の建物であるため、維持・補修費もばか
にならず、すぐに季節外れの海辺のように荒れ果てた場所に変わる。
これに比べ、「あるがままの風景」は、巨額の制作費を費やしても作ることができない偉大な撮影所だ。韓国
ドラマ『IRIS-アイリス-』の撮影が行われ、その美しさが評判になった日本の秋田県には、今や日本人だけ
でなく韓国人観光客も押し寄せるようになった。また、中国映画『狙った恋の落とし方。』(原題:『非誠勿擾』)
に登場した北海道は、中国人観光客でにぎわっている。春川や南怡島が、日本人女性にとって欠かせない観光
コースとなったのも、ドラマ『冬のソナタ』のおかげだ。これらの地域に観光客が集まるのは、テーマパーク型
の撮影所ではなく、あるがままの自然と人間が魅力を与えてくれるからなのだ。
公営放送までも朝からドロドロした愛憎劇を放映する韓国とは異なり、日本では、公共放送NHKの朝のドラマ
は、ほとんどが地方や伝統の価値を前面に押し出している。現在放送されているNHKの朝の連続テレビ小説は、
大阪と広島を舞台に、少女が郷土料理の店を開店するまでの過程を描いたものだ。1961年にスタートしたNHK
の連続テレビ小説は、漁業や旅館、花火、庭園など、一貫して伝統文化に関連する素材を扱っている。また、
北海道から沖縄まで、日本全国の都道府県がまんべんなく撮影地として登場した。ドラマは、その地域の風景
や伝統文化を自然な形で全国民に紹介する役目を担っている。刺激的な商業ドラマが人気を集める日本で、
NHKが伝統や地方という素材にこだわるのは、NHKが公共放送だからだ。刺激的な内容ではないが、NHKの連続
テレビ小説は人気が高い。ドラマの舞台となった地域では観光客が急増し、地方自治体がドラマの招致合戦を
繰り広げることも多い。韓国でも、地方のプライドを高め、発展に貢献するような良質のドラマが増えてほし
いものだ。
車学峯(チャ・ハクボン)記者(次長待遇)
朝鮮日報 2010/10/24
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