10/10/25 07:07:57
反射鏡:尖閣問題で日本人の「胆力」が試される=専門編集委員・布施広
漁船の姿をした「黒船」が日本に突進してきた形だろうか。尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件以降、
日本の外交・安保をめぐる論議が熱を帯びている。尖閣は中国領だと声を張り上げる中国要人の迫力に接して、
嫌中派も媚中(びちゅう)派も「この国と仲良くやっていけるか」という疑問を覚えたのではないか。
友人同士の一時的ないさかいならともかく、仲良くしようと努めてきた相手の、芳しからぬ魂胆が見えてきた印象もある。
平和立国・日本の針路を大いに語るべきだ。
「軍事力は力強いハンマーだ。だが、米国の直面する問題が、常にクギとは限らない」。
そんな言葉を私に教えてくれたのは、米同時多発テロ(01年)が起きた時の米軍制服組のトップ
(統合参謀本部議長)だったヘンリー・シェルトン氏だ。
クギと思ったものが爆弾の起爆装置なら大変なことになる。同氏の退任後に米国が始めたアフガニスタン攻撃、
イラク戦争の結果を考えると、いっそう示唆に富んでいる。
この言葉は尖閣に軍事力を持ち込むのは危険という論拠にもなるが、東アジアでの米軍の存在感を
反省する材料にもなる。北朝鮮は、米国が朝鮮半島では戦えないと踏んで挑発的な態度を取り、
中国も尖閣問題などで膨張政策をのぞかせつつ米国の出方を探っている。
米国が軍事行動を繰り返す中東・イスラム圏とは別の危うさがある。
そう考えれば、尖閣問題で米国が明確なシグナルを発するのは自然なのだが、
なぜか日本には米国の意図を疑問視する声がある。米政府の公式見解をおさらいしてみよう。
前原誠司外相とクリントン米国務長官が会談した9月23日、クローリー国務次官補は言った。
「尖閣諸島は日本の管轄下(jurisdiction)にあり、日米安保の対象と信じる。
尖閣諸島の帰属で米国が特定の立場を取らないことも強調する」
同日の国防総省の会見ではマレン統合参謀本部議長が「政治、外交努力による緊張緩和を期待する。
我々が当該地域における米国の同盟国・日本を非常に(very,very)強く支持(support)しているのは明白だ」と述べ、
ゲーツ国防長官は「我々は同盟国として諸義務を果たす」と語った。
大統領直属の国家安全保障会議(NSC)のベーダー・アジア上級部長は同日、「第一に米国は尖閣に関する
中国と日本の領土的主張に特定の立場は取らない。しかし、第二に日米安保条約は日本によって管理される
(administered)全地域を対象(cover)とする。72年の沖縄返還以来、尖閣諸島は日本が管理してきた」と述べた。
あいまいな見解だろうか。かつて駐日米大使が尖閣は安保の対象外という趣旨の発言をしたことや、
島しょ防衛は日本の責任という原則を思い出すのもいいが、なおオバマ政権の見解は明瞭(めいりょう)である。
米国への疑問と見えるのは、背筋を伸ばして中国と向き合えない人の、理由にならない言い訳ではないか。
(>>2以降に続く)
毎日新聞 2010年10月24日 東京朝刊
URLリンク(mainichi.jp)
※依頼ありました(依頼スレ132、>>362 >>373)
関連スレ
【毎日新聞】木語:中国人船長釈放、どこが外交敗北だ 危機回避の外交がなんとか機能したではないか、日本中が冷静さを欠いている[10/14]
スレリンク(news4plus板)
【毎日新聞】「日本外交の過誤」に学ぶ 過熱したナショナリズムは外交の手足を縛る 尖閣問題対応もその教訓に照らして考えるべき[10/19]
スレリンク(news4plus板)
ほか多数