10/10/18 08:07:23
≪唖然とさせられた菅外交≫
中国漁船船長の処分保留のままの釈放というあっけない幕引きとなった、尖閣漁船衝突事件をめぐる菅直人民主党政権の
稚拙な外交は、日本人だけでなく海外の多くの人々も唖然(あぜん)とさせてしまった。これが今の日本の力なのかと思うとまさに
切歯扼腕である。
なぜ、巡視船への損害賠償を約束させて船長を釈放しなかったのか。なぜ、釈放に当たり中国の経済報復措置撤回などを
引き出しておかなかったのか。そしてなぜ、拘束された日本人4人の解放を取引しなかったのか。さまざまな交渉ができたはずだ。
(中略)
≪日本にとっての教訓と対応≫
事件は教訓をいくつか残した。第一に、中国の尖閣諸島支配方針は明らかだから、日本は実効支配を確実なものにすべきだ。
自衛隊の駐屯や周辺での日米軍事演習も重要だが、ソフトな方策として巡視艇の増派、ヘリコプター離着陸地の建設、標識の
設置などが必要だ。その上で、魚釣島への要人訪問も検討すべきである。
例えば、マレーシアは、中国と係争中のラヤンラヤン島に滑走路などの施設を設けており、2008年にはナジブ副首相が、また、
昨年にはアブドラ首相が夫人、陸海軍の司令官を帯同して空軍機で同島を訪問、同島が自国領土であることをアピールした。
第二に、尖閣諸島周辺の海域に近づく中国の漁船は人民解放軍の海軍の指示を受けて、国家海洋局の保護の下に動いて
いるという想定で対処すべきである。
今回、逮捕された中国人船長も実は海軍軍人だったとの情報がある。普通の漁民なら、中国大使館員が石垣島で船長に
連日、接触したのは奇異である。将来、海軍艦船の指示で一度に100隻以上の漁船が尖閣諸島の領海に入るなり、乗組員
(漁民に扮した海軍兵)が尖閣諸島に上陸したりするかもしれない。現在陸上自衛隊が進めている離島防衛作戦はこうした事態
に対処できるのだろうか。
第三に、今回、中国政府は尊大になりつつある人民解放軍と「弱腰」政府批判を強める保守派の圧力で対日強硬策をとった
との見立て通りなら、この傾向は今後増幅すると見るべきである。
船長を釈放させるため、5回に及ぶ駐中国日本大使の呼び出し、外交的諸会談の中止、観光客の訪日中止、レアアース
(希土類)の対日禁輸など、外交的、経済的制裁を総動員して、日本に「懲罰」的圧力をかけて白旗を揚げさせる方策をとった。
残念ながら、菅政権は膝を屈した。となると、中国は将来、これと同様か、もっと品の悪い手段に出てくる可能性があると覚悟した
方がいい。
中国の愚劣なやり方には、常に対抗策を用意しておくべきだ。中国が日本の船舶に対し不当な税関手続きをとるなら、中国人
観光客の日本入国手続きを厳しくするとか、機内持ち込み荷物(土産品)制限を厳しくするとかの策が考えられるはずだ。その結果、
中国人が反日、嫌日的になり、それが反政府運動になることを政府が恐れるとき初めて、中国政府は日本に妥協的になるであろう。
≪中国とは適切な距離が必要≫
日中両国政府は、「戦略的互恵関係を深める」-を謳い文句にしているものの、今回の事件でそんな関係の構築は幻想ないしは
虚構に過ぎないことが明白になった。「戦略的互恵関係」という用語が使われだした08年5月以降も、中国は、東シナ海の日中中間線
付近での油田採掘を日中共同で行うとされているのに、これに応じていないばかりか、自国独自の採掘を再開させたフシもある。
中国は日本の国連常任理事国入りに反対、北朝鮮に拉致問題解決を近年、働きかけた様子もない。中国は、東アジアでの
米海軍や海上自衛隊の影響力を排除しようとしているし、戦勝65周年記念声明を出してロシアと戦略的関係も構築している。
どこに日中の戦略的互恵の動きがあるのか。
(以下略。全文はソース元でどうぞ)
ソース(MSN産経ニュース、平和・安全保障研究所理事長 西原正氏)
URLリンク(sankei.jp.msn.com)