10/10/15 05:59:40
南シナ海、東シナ海における中国海軍の傍若無人ぶりは目にあまる。世界の人びとは顔をしかめている。もちろん、愛国主義を
教えられてきた中国の若者たちは快哉を叫び、この水域の海底資源を一手に収めたいと願う中国海洋石油の首脳陣はご満悦で
あろう。それだけであろうか。
中国の軍事力の増強は尋常なものではない。その国防費の毎年の伸び率は平均15%であり、それは21年間にわたり続いてきた。
始まりは1989年、天安門事件があった年である。士官と兵士の生活改善という名分だった。民衆に向かって武力を行使させた
トウ小平としては、陸軍を慰撫しなければならなかったのであろう。
そして、そのトウ小平の指名により党中央軍事委員会の主席になった江沢民は、革命戦争と無縁、軍とも無縁だったことから、
軍の機嫌を取るため国防費を増やし続けなければならなかった。
(中略)
≪提督たちの大風呂敷≫
だが、愛国主義を看板に掲げる将軍たちが国防費の維持、増大を強く求めていることも、誰もが思うところだ。中国海軍艦艇が
南シナ海や日本近海で緊張を高め、周辺各国を刺激し、騒ぎを引き起こしているのもひとつには、海軍首脳による予算獲得の
ための国内向け宣伝行動なのだろう。
ただし、国防費の維持、増大に血道を上げる最強の勢力は、また別にいるのではないか。
1991年にトウ小平に代わって「改革・開放」の論陣を張った、周瑞金というジャーナリストがいる。天安門事件の衝撃から
教条主義の古い陣地に引きこもってしまった江沢民とほかの幹部を引きずり出した人物である。それから18年後の昨年10月、
彼は、権力と利益が絡み合ったいくつもの国有企業、事実上、地主と化してしまった地方政府を指して、中国を滅ぼすものだと
批判し、「特殊利益集団」だと糾弾している。
その周も、ミサイルから戦車、軍艦、航空・宇宙までの分野にわたる軍需メーカーの一群を取り上げるのは避けている。
これらの軍需工業もまた、中国の新貴族たちが支配する「特殊利益集団」なのであり、増大を続ける国防費の最大の受益者
なのである。
≪“埋蔵金”があった≫
中国の国防費については、公表される数字がすべてでないことは誰もが分かっている。米国防総省がこの8月に発表した推計
では、昨年度の中国国防費は1500億ドルと公表数字の2倍だ。
政府から公表された数字とまさに同額の“埋蔵金”が存在しているのだ。これが、軍需メーカーの研究、開発費に回され、
空母建造や、地対艦ミサイル、衛星破壊兵器の開発・製造の費用に充てられているのだといわれる。
そして、この「特殊利益集団」は、小型火器は言うには及ばず、軍用機やミサイルの輸出に懸命である。権威主義的外国政府
と連携を深める最も有効な手段が兵器の輸出であることは、中国政府がはっきり認めているところだ。
さらに、この「特殊利益集団」の幹部たちは、何十年か先には、米国のロッキード・マーティン社や英国のBAEシステムズのような
世界トップの軍需企業になることを夢見ている。国防予算を削減させないのは、提督たちの大風呂敷だけではなく、
この「特殊利益集団」の力なのである。
今年の国防費の伸び率が、1桁(7・5%)だったことに触れたから、ついでに、治安維持費のことも記しておこう。治安維持費は
昨年、前年比16%の伸びを示し、今年は8・9%増えて、総額5140億元となった。国防費として公表された数字よりも、わずか
百数十億元少ないだけだ。
そうしてみれば、すべての「特殊利益集団」の一致した願いは、治安維持費を増やし続けることにもあるに違いなかろう。
ソース(MSN産経ニュース、中国現代史研究家・鳥居民氏)
URLリンク(sankei.jp.msn.com)