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尖閣諸島沖での海上保安庁巡視船と中国漁船の衝突事件で日本側は、中国の要求に屈する形で中国人
船長の釈放を決定した。日本政府は「捜査上の判断」(仙谷由人官房長官)と強調しているが、対中関係に
配慮して民主党政権が「政治決断」した要素が大きい。中国は東シナ海での活動をますます活発化させることが
予想され、海洋権益をめぐる今後の駆け引きで禍根を残すことは間違いない。
東シナ海ガス田共同開発の条約締結交渉の一方的延期、要人交流・文化交流の停止、レアアース(希土類)
の対日輸出停止…。衝突事件を受けて中国は次々と「報復措置」のカードを切り、圧力を強めた。日本側には
当初、「中国にも日中関係を悪化させる意図はない」「強硬な態度は、中国の国内世論向け」という分析もあった
が、主権が絡む問題では断じて譲らないという中国政府の決意を読み誤った形となった。
中国が行動をエスカレートさせる一方で、日本側には事を荒立てたくない事情があった。日中の経済関係は
拡大の一途で、2008年の輸出入を合わせた貿易額は約27兆7800億円に達し、日米の貿易額を2年連続
で上回った。もはや中国の存在抜きに日本経済を語ることはできず、財界からも日中対立による経済的な損失を
懸念する声が強まっていた。
ニューヨークで23日に開かれた日米外相会談では、日米安全保障条約の適用範囲に尖閣諸島が含まれる
ことを確認。尖閣は日本の領土であり、日本防衛の対象になるという明確なメッセージを米政府から引き出した
ことも、日本側にとっては事態収拾に動く契機となったとみられる。
ただ今回、中国側が強く出れば、日本は譲歩せざるを得ないという図式が鮮明になった。ガス田共同開発の
具体化や、中国との排他的経済水域(EEZ)境界線の画定など、東シナ海をめぐる諸課題で中国側に主導権
を握られることになりかねない。
一方、船長を釈放した那覇地検の判断に、直接の「政府介入」がなかったかも重要なポイントだ。同地検の
次席検事は釈放の理由に「国民への影響や今後の日中関係」を挙げたが、自民党の谷垣禎一総裁は「捜査
機関が言うことではない。政府が担うべきことだ」と疑問を呈した。捜査への圧力があったとすれば、政権への信頼
は失墜する。政府は釈放の経緯や判断根拠を国民に丁寧に説明することが求められる。
時事通信
(2010/09/24-21:15)
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