10/08/28 08:24:09
(>>1の続き)
--歴史問題はどう取り扱えばよいでしょうか。
歴史問題や過去の戦争に対する日本の反省などをいつも頭に置きながら外交関係を展開していく。
その謙虚さが日本の首相になければ外交は進まない。と同時に日本独自の主張も堅持する。
一方では、個人レベルの親愛感をつくり、それによって外交を進める。首相というものは日本の過去を
背負っている。国際的地位や経済の実力とか、そういうものは言わないでも首相の挙措に対して
大きな力になってくれる。謙虚さが大事な要素になる。
--天皇訪韓をどう考えますか。
今上天皇が皇太子のころ、訪韓の意思があったが、美智子妃殿下(現皇后)の病気でできなくなった
という過去があった。これは懸案として考えるが、しかし両国情勢からみて、非常に慎重を要する
課題だと思う。【聞き手・西岡省二】
◆金鍾泌元首相
◇菅談話、一歩前進した 全文化財が返還されるべきだ
--韓国国民が「忘れてはいけない教訓」は何でしょうか。
36年間にわたる日本の植民支配から韓国国民が受けた迫害と苦痛は、戦後世代には想像もつかないものだ。
主権を守り国家経営をするには未来を洞察する指導者の慧眼(けいがん)、
国民統合を通じた国力の増強が必須だ。
--中国は今後の両国関係にどのような影響を与えるでしょう。
また、いつ切迫するか分からない北朝鮮情勢をどうみますか。
今や日韓関係は韓・日・中の三角構造の枠の中で把握されねばならない。
私は「3国は相互に相手を敵としてはならない」と考える。北東アジアの平和と繁栄という認識を
共有すれば、北東アジアはもちろん世界秩序構築に肯定的に貢献できるはずだ。
今後、北朝鮮の後継者がどのように決まるにしても、当分の間(北朝鮮の体制は)このままいくだろう。
米国も手を出すのは簡単ではない。
--菅直人首相談話をどう評価しますか。
95年の村山談話から一歩前進した内容だ。植民地支配の「強制性」を認定したのは初めて。
歴史問題について過ちを認めて再び繰り返さない意志を示した点は評価できる。
一方、日本による併合が不法に行われたという点は動かない事実だ。
今回の謝罪談話がこの点を指摘していればという残念さは残った。
--早くから日韓国交正常化で経済開発資金を作る必要があると主張してきましたね。
当時、我が国は世界の最貧国だった。北朝鮮の1人当たりの国民所得が124ドルで韓国は87ドル。
「まず腹を減らした国民を食べさせ、そして北と対決できる国力を育てよう」。
これが(61年に朴正熙少将らが主導した)軍事革命(クーデター)の動機だった。
しかし当時、我々には、資源・資本・技術・経験のすべてがなかった。貧しい韓国に金を貸してくれる国もない。
一日も早く国交正常化を通じて日本から請求権資金と経済協力を得て経済開発に投入するしかなかった。
--正常化を決定付けた62年の「金・大平メモ」で日本が無償3億ドル、有償2億ドル、
民間借款1億ドルの総額6億ドルを提供するとの仲裁案を作った経緯は。
交渉の席で、大平正芳外相(当時)が「池田勇人首相(同)から8000万ドルが限度と指示を受けた」と言った。
それを聞いて私は席を立った。その額では話にならなかったからだ。しばらく激しいやりとりがあり、
やがて大平外相が「あなたには感銘を受けた。(外遊中の)池田首相が帰ってきたら怒るだろうが、
私の政治生命をかけて」と示したのが「無償2億ドル、有償2億ドル」だった。
私は最終的に「無償3億の計6億ドルプラスアルファにしよう」と提示した。
大平外相が「これで私はダメです。国会で袋だたきになる。しかし私はあなたにほだされた」と言って
受け入れた。それで他の問題もすべて解決した。
(>>3以降に続く)