10/08/11 19:18:30
日韓併合談話 歴史を胸に刻み未来へ
百年前、日本は韓国を併合し植民地にした。菅直人首相は歴史を謝罪し、未来志向の関係を呼び
掛ける談話を発表した。歴史の重みを胸に刻み、隣人との新たな協力関係を築きたい。
日本と韓国は一九一〇年八月二十九日、「韓国併合条約」を公布した。植民地時代は四五年の日
本の敗戦まで続いた。
菅首相は談話を通じ「植民地支配がもたらした多大の損害と苦痛に対し、あらためて痛切な反省と
心からのおわびの気持ちを表明する」と述べた。
村山富市元首相が九五年、戦前、戦中の歴史について「痛切な反省」と「心からのおわび」を表明し、
アジア諸国の多くは評価している。菅首相談話は「村山談話」を踏まえたものだ。
菅首相はさらに「韓国の人々は国と文化を奪われ、民族の誇りを深く傷つけられた」と表現した。
併合により五百年続いた王朝は滅びた。植民地時代末期には学校で日本語だけを教え、名前も日
本式に変える創氏改名を強要した。同化政策が韓国人には最も屈辱的なことだった。首相談話はそ
の心情を考慮したといえよう。
民主党内にも菅首相の新たな謝罪表明に反対論も出た。補償問題を蒸し返すという危惧(きぐ)もあ
る。だが、閣議決定を経た以上、少なくとも閣僚は首相談話の内容から外れる言動を自制すべきだ。
国交が正常化した六五年の「日韓基本条約」では、両国は韓国国民に対する植民地時代の個人補
償も含めた請求権は決着したと確認した。菅首相も会見でこの点を強調した。
ただ、条約締結後に詳細が分かった在サハリン韓国人の帰国や、日本各地に残る朝鮮半島出身者
の遺骨返還など人道的協力は続けると説明した。
請求権問題を見直すのではなく、日韓双方が未解決だと判断した場合にだけ限定的に取り組むべき
だ。宮内庁が保管する李朝の儀典書「朝鮮王室儀軌」という文化財の譲渡もその一例だ。
韓国の李明博大統領は菅首相との電話会談で「真心がこもった談話だ」と評価し、日本の今後の対
応に期待を示した。
歴史認識をめぐる日韓の論争は今後も続くだろうが、菅首相は「反省と謝罪」を明確にした。両国で
は年間五百万人が往来するほど交流が深まっている。韓国国民が併合百年の談話を「歴史のひと区
切り」と受け止めてくれるよう、切に願う。
ソース:中日新聞 2010年8月11日 朝刊5面
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