10/08/09 11:46:11
【コラム】「世界唯一の暴力国」
「申し訳ないが、うちには韓国の製品は一つもありません）」
先日、取材した北京の新エネルギー産業関連ファンド会長は、いすに座るや、こう切り出した。1963年生まれで、
北京大学経済学科を卒業した会長は、改革・開放初期の中国経済システムを設計する機関「体制改革
委員会」で勤務した経験のある元エリート官僚だ。28歳という若さで地方都市の副市長も務めた。
その会長が韓国製品を使うのをやめようと思い立ったのは、90年代初めに中国に進出した韓国企業の労使
関係が大いに影響しているという。「若気の至りか、行き過ぎた民族主義かもしれないが、『中国人労働者が
韓国企業の管理責任者に暴力を振るわれた』『給与の遅配があった』などの話を耳にしてからは、韓国製品は
絶対に使わないと決心した」。だが、幸い会長は最近、韓国人の企業関係者に会う機会が多く、こうした先入観
はだいぶ変わりつつあるという。
中国に進出した韓国企業は、人件費で見ると韓国の10分の1程度だが、長年の社会主義的慣習に染まり、
非効率的で責任感に欠ける労働者を雇用しなければならなかった。仕事に慣れると、給与が少し高いほかの
会社に流れてしまう中国人労働者に裏切られたと感じることもあった。こうした不満が、時として中国人労働者に
対する暴力や暴言、侮辱などとして噴出することもあったという。しかし、中国に進出した先進国の企業関係者が
従業員を殴ったという話は聞いたことがない。
給与支払いが遅れたり、踏み倒す韓国系の中小企業事業主もいた。初期に中国に進出した中小企業のうち、
相当数は韓国で高い給与を支払えない零細企業だった。一部には、経営が苦しくなると給与の支払いが遅れ、
多額の給与を踏み倒しして、夜逃げする会社もあった。
2000年代半ばに上海で、長江デルタ地域に進出した韓国企業の労使関係の実態について聞く機会が
あったが、韓国政府機関の関係者は「恥ずかしくて口にできない」と語った。中国人労働者を対象にアンケート
調査を行ったところ、「韓国人の管理責任者に『仕事ができない』とすねを蹴飛ばされ、とても侮辱された思いを
した」「『会社が苦しいから』と、給与の支払いが2－3カ月遅れたこともある」といった回答が予想以上に多かった
という。
ここ5－6年の間に、中国に進出した韓国企業の雇用形態は大きく変わった。多数の企業が労働者と直接
接触する現場管理責任者を韓国人駐在員から中国人に切り替えた。韓国企業だが重役ポストに中国人を
任用するケースも多く見られる。中国人の新入社員を韓国本社に派遣し、韓国の文化に触れさせる機会を持つ
企業も増えている。これまでの経験を通じて、労使確執のコストを減らすほうが、長期的に見れば企業に利益を
もたらすということを身をもって知ったのだ。
しかし、こうした努力の裏側で、先月末、中国・広東省にある製造業の都市・東莞で、ある中小企業の韓国人
管理責任者が、中国人従業員に暴力を振るうという事件が起きた。これに中国人労働者が抗議し、工場内で
大規模な集会を開き、一部は街に繰り出した。この事件で最も困難な立場に立たされているのは、400－500社
に上る現地の韓国企業だ。「外国で、その国の人に『仕事ができない』と暴力を振るう世界唯一の国」という汚名
を着せられるのではないかと心配になる。
URLﾘﾝｸ(www.chosunonline.com)