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延吉は、朝鮮半島の付け根の辺りにある中国東北部の街だ。
中朝国境を流れる豆満江まで車で一時間もかからない。
日本と朝鮮半島、中国との歴史が重なる地域である。
知人の紹介で、この地で中国人女性と結婚して暮らす韓国人の
金光植さん(53)と知り合った。私が日本人だと言うと喜び、黒光りする細長い刀を見せてくれた。
「日本の刀です。妻の実家に伝わる家宝。ここを見てください」
日本の植民地時代のものかと思ったが、柄の部分に「豊臣秀吉」、
「加藤清正」との漢字が見えた。金さんによると、16世紀、秀吉の朝鮮出兵の際、
清正に送られたものが朝鮮半島で人づてに伝わったに違いない、という。
「日本の方にぜひとも買ってもらいたい。『朝鮮侵略』という日本の
過去を示すものです。失敗したとはいえ、自らの悪い歴史の証拠を早く回収した方がいい」
「秀吉の朝鮮侵略」は大昔の歴史だが、侵略を受けた側の朝鮮民族に
とっては今も忘れられない重い過去なのだろう。日本人もみな、強い関心があると思っているようだった。
刀が本物かどうか確かめようがない。金さんも以前はソウルで記者だったというが、
今の仕事はよく分からない。ただ、勢いに押され、「いくらですか」と尋ねた。
「4億元(約50億円)」
驚く私に対し、金さんは笑みを浮かべた。
でも、その目は笑っていないように見えた。(古谷浩一)
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