10/07/07 10:34:53
URLリンク(www.tokyo-np.co.jp)
写真: ウイグル族の園児たちが中国語で「ニーハオ!」とあいさつしてきたカシュガルの幼稚園
「生きていくためには、ウイグル人のプライドを捨てるしかなかったんだ」
中国西端の街、新疆ウイグル自治区カシュガル。四十代の公務員はイスラム教徒が好むミルクティーを飲みながら、
周囲を警戒して静かに語った。
四人きょうだいの長男。ウイグル族の文化や社会にこだわる同級生たちとは違い、幼いころから両親に中国語と英語を
学ばされた。成績は常にトップクラスで、北京の大学に進み、あこがれの職業の公務員になった。
同級生らは、外国人向けの中国語の中級試験に合格しなければ、職場で給料アップもかなわない。長文読解に苦しむ
友人の姿を見て「“勝ち組”でよかったと正直思った」。
自治区政府は昨年七月の区都ウルムチの騒乱を受け、ウイグル族に幼少時から中国語を学習させる「バイリンガル」
教育を強化。五年後までにすべての幼稚園と小学校に導入するという。「隣国のテロリストが、中国語を話せない
ウイグル族を巻き込んでいる」(ヌル・ベクリ自治区主席)との疑念は深い。
トルコ系ウイグル族が人口の約90%を占めるカシュガルの第一民族幼稚園。ウイグル族の園児らが「ハロー」と手を
振ってきた。女性教諭はすかさず唇に人さし指を当て「しっ、ニーハオでしょ!」。漢族と同じく国旗掲揚や国歌斉唱も
ある。「ウイグル文化が軽視されるのは悔しいけど、すべてこの子の将来のため」と付き添いの母親。定員の二倍約七百人が
通うほど人気が高い。
ウイグル族が暮らす旧市街で、小学四年生の女子児童が、茶色の土壁を黒板代わりにチョークで漢字の練習をしていた。
「漢字は難しくないよ」と話し、「蜻〓(とんぼ)」の字をすらすらと書く。「ウイグルの踊りはできるの」と尋ねると、
「学校で教えてくれないし、踊れない」とうつむいた。
最近、ウイグル語は片言で、読み書きできない若者が増えている。少数民族のエリートが通う北京の中央民族大学の
イリハム・トフティ副教授は「多民族を認め合うことが民族政策の根幹」と強調。だが、あるウイグル族は「実態は融和
じゃなく、漢族への同化策さ」と切り捨てた。
カシュガルの大広場で夕涼みするウイグル族の住民たち。近くの大型スクリーンに中国語の字幕とともに、ウイグル語の
大音量で「中国語を勉強すれば、とても便利!」。満面に笑みを浮かべたウイグル族の少女が映し出されていた。
◆ ◆
広東省の工場で昨年六月、出稼ぎのウイグル族が漢族に殺害される事件が発生。ウルムチでは同七月五日、抗議デモが
騒乱状態になり、「民族融和」の難しさをあらためて見せつけた。騒乱から一年、現地を歩き苦悩するウイグル族の本音を
探った。 (新疆ウイグル自治区で、朝田憲祐、写真も)
※〓は虫に廷
東京新聞: 2010年7月6日 朝刊
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