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うつつか夢か:マニフェスト点検 地方選挙権 「私たちの意見誰が代弁」 /岩手
◇在日外国人にも権利ほしい
テレビのニュースに映る候補者が政策を訴える姿を、じっと見つめる。
「私たちの意見はいったい誰が代弁してくれるの」。
参院選が公示された先月24日の夕方、北上市九年橋の自宅居間で、山本達子さん(73)は険しい表情で語気を強めた。
選挙の度に繰り返してきた問いだ。
雫石町で生まれた山本さんは、本名を崔達子(チェタルチャ)という。
在日韓国人2世だ。
20歳で同じ2世の明平(本名・姜鎬淑(カンホスク))さん(73)と結婚。
北上市でスクラップ工場や焼き肉店などを経営した。
税金もきちんと納めてきたが、日本国籍がないため選挙権はない。
「生まれ育ったのは日本だし、祖国だと思ってる。
自分たちが暮らす社会に参加する権利がほしいだけなのよ」という。
1982年まで年金に加入できず、今でも明平さんが廃品回収業で生計を立てる。
長男(51)は弁護士志望だったが、当時は在日外国人に門戸は開かれていなかった。
長女(41)が国立大の推薦入試を受ける際、高校の進路担当から「本名のままでは合否に響く」と言われたこともあった。
「子どもたちにもずいぶん嫌な思いをさせたっけ」と振り返る。
民主党が昨夏、衆院選マニフェストの原案に、永住外国人への地方選挙権付与を盛り込んだ時は、「ついに」と期待した。
だが、国民新党の反対や党内での異論もあり、法案提出の見通しは立っていない。
参院選では一語もない。
県内でも今年3月、大船渡市議会は永住外国人への地方選挙権付与法制化に反対する意見書を採択した。
意見書を提出した平山仁市議は
「在日(韓国・朝鮮)の人は母国で参政権がある。選挙権が欲しければ日本国籍を取得すべきだ」
という。
県内で約700人が登録する、在日本大韓民国民団県本部の姜英萬(カンヨンマン)事務局長は
「期待していただけに失望も大きかった」と打ち明ける。
山本さんは、ふと思い立ったように、居間のテーブルに家族アルバムを広げた。
ページをめくりながら思う。
「孫たちには、同じ悔しさは味わってほしくない」。
穏やかな表情、静かな口調から、強い願いが伝わってきた。【宮崎隆】
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