11/08/16 09:01:25.79 K0oxZi/e0
「木下じゃないか、どうした?」
懐かしい声だった。男が振り向くと中学の同級生であった。
「山丘…。」
中学の時、酷い虐めに遭っていた男を毎回かばってくれたのが、この山丘であった。
哀れな男はこれまでのすべてを話した。
「ふむ、なるほど。」
「私は…ここに居たら駄目になってしまう。」
男は自分とは正反対の清楚な身なりの彼を上目遣いで見た。
男はため息をついた。
「君は広島に帰る、それは構わない。でも、その、みゆちゃんって子はどうなる?」
「あ。」
「大丈夫、迎えに来るからね。」男はあの日の約束を思い出した。
あの時、みゆはこう言った。
「うん、みゆ、いい子にしてるよ!ひろにー、待ってるからね。」
あの時、本当は彼女も辛かったはずだ。
ヒロは無邪気な笑顔で自分に向かって手を振るみゆの姿を思い出していた。
「もう、行くのか?」
「いや…。」
「この近くに住んでいるんだ。今日は泊まってゆっくり考えたまえ。」
男は友人の言葉に甘えることにした。