10/12/06 11:04:55 uo78nsRG0
男は闇の中を漂っていた。今朝、マンションの屋上から飛び降り肉体は地面に叩き付けられ粉砕され、魂だけがこの世に残ったのだ。
自ら命を断ってしまった生命はあの世の掟により、成仏出来ず輪廻により来世で生まれ変わることも出来なくなるのだ。
自らの生命を存続させるには既に空の肉体に再び入り込むことだが、男の体は既にこの世に存在しない。
どうしたものか。考えているうちに市立病院の前に付いた。
灯りの付いた病棟の内部をカーテンの隙間から覗き込むと、大きな機材があり白衣を来た人が深刻そうな顔をしていた。
周りを取り囲んでいるのは身内であろう。ベッドには小さな手足が見えた。
どうやらこの家の子どもが亡くなったらしい。
男は病室に入り込んだ。魂なので簡単に入ることが出来た。ベットに横たわるのは10歳ぐらいの髪の長い少女だった。
「気の毒になあ」
男は思った。
他人の肉体に入り込むことはあの世の掟で禁じられている。しかもこの子は生前の自分の年齢と20以上も離れている。
だが男は既に掟を破った大罪人である。このままいてもいずれ閻魔の裁きにより消えてしまう運命なのだ。
「背に腹は変えられない。」
男は決心し少女の体に入り込んだ。