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次の日本代表監督が誰になるのか。ブラジルでの2014年ワールドカップ(W杯)を
目指している僕にとっては大事なこと。しっかりと選んでほしいね。
欧州から監督を日本に連れてくるのは簡単じゃないし、時間もかかる。欧州は近く
なったと日本人が思っていても、欧州の人々は日本を遠いものと感じている。商業
的にも現代サッカーの中心は欧州で、そこで働く監督が外に出る積極的な理由が
ない。欧州を離れれば自分の価値が落ちると考える監督もいるだろう。
かといって「ほかに働き口がないから日本に行きます」という人でも困る。そんな
監督の力量などは知れたものだし、仕方なく引き受けた人間ほど、結果が出ないと
「来たくなかった」と言い訳を始めるものだ。
人が異文化へ出たときに失敗する理由の一つは、前の地での成功体験をそのまま
持ち込むことだという。日本代表を率いる前にアフリカで監督を務めたトルシエは「ア
フリカ人には規則を作りすぎてもうまくいかない」と言っていた。ときには外出を許し、
ある程度の自由を与えないとプレーの質まで落ちるらしい。アフリカにはアフリカ、日
本には日本に合わせた指導があり、特性を見極めないとうまくいかない。
僕はトルシエに「君は日本人と違う。外に出たことのある人間で、出ることにも慣れ
ている」と言われた。彼は外国に適応する苦労もメリットもよく知っていたんだろう。
選手には外国へ出ることを勧めていたね。
監督がスペイン人になれば、スペイン代表やバルセロナのサッカーができると安直
に考えるのは間違っている。日本には日本の実力があって、短期間で革命的に変え
られる方法なんてない。あれば岡田監督だって、誰だってやっている。
どうも日本では、ボードの上で戦術を語れる人が優れた戦術家だという見方が行き
過ぎている感じがする。モダンな戦術や最新理論……。でも、メッシ(アルゼンチン)の
ドリブルを前に多くの戦術が無力なのをみると、1対1の強力さの方が有用じゃないか
とも思えてくる。
ブラジルはもっとピッチ上での表現を大事にする。ボールは人間より速く、人間はボ
ールより速く走れない。この原則も忘れて戦術が語られてはいないかな?
※日本経済新聞(8月27日)より