10/06/27 20:25:14 0
杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
文字どおりのシーソーゲームではあったが、シーソーを最初に揺らすことができなかったツケが、最後の反撃時間の
少なさにつながったと僕は思う。あと10分あれば、韓国は同点に追いつくことができたに違いない。先制点の重さを
痛感させられた試合になる。
追いかけて強いのが韓国の魅力だ。“キムチ魂”と言うべき、独特のスピリットを備えている。そういう意味では、
ウルグアイが先制してもそれで試合が決まりそうなムードは一切しなかったが、スピリットではウルグアイも負けていない。
伝統的に、抜け目のなさ、機を読む力に一日の長がある。
同点弾を許し1-1にされた直後、ウルグアイは、そのスピリットを全開に反撃に転じた。
このスピリットの応酬こそが、この試合最大の見所で、緊張感みなぎる好試合になった原因だ。で、韓国がキムチ魂を
再度全開にしようとしたとき、終了の笛が吹かれた。ウルグアイ魂がキムチ魂に、僅差で判定勝ちした試合といってもいい。
ウルグアイ魂を象徴する選手は、2トップのふたり。この日、2ゴールを決めたスアレスと、先制点のシーンで
決定的なパスを送球したフォルランになる。つまり韓国は、スアレスの決定力と、フォルランの総合的なアタック力に
屈したという見方もできる。
ただ、繰り返すが、サッカーそのものは韓国のほうが良かった。良いサッカーをしたのはどちらかと言えば、
韓国に軍配が上がる。賞賛されるべきサッカーをしながら韓国は惜敗した。「美しい敗者」という言葉が、
韓国にはピタリと当てはまる。
試合後、現地の投宿ホテルに僕を運んでくれたタクシーの運転手も「韓国のサッカーは素晴らしかった」と賞賛した。
こちらを韓国人と勘違いし、ヨイショしたのかと思いきや、さにあらず。そういう話ではなかった。
日本も見習いたい負け方だ。日本が次のパラグアイ戦で敗れても、第三者がお世辞抜きで「日本のサッカーは
素晴らしかった」と、賞賛してくれるなら、僕はそれで大満足。良いサッカーの追求こそが、次への結果につながる
という事実を忘れてはならないと思う。
TITLE: web Sportiva
URL:URLリンク(blog.shueisha.net)