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産経抄 11月10日
「今、国を開かないと、産業の空洞化が加速する」「参加すれば、農業が
つぶれてしまう」。TPPをめぐる議論はまったくかみあわない。歴史を振
り返って同じような例を探せば、誰でも思い浮かぶのが、幕末、国論を二
分した「開国派」と「攘夷(じょうい)派」の対立だろう。
▼もっとも民主党内の混乱を見ていると、むしろ戊辰戦争のころ佐幕派
の藩が、迫り来る官軍を前に苦悩する姿を彷彿(ほうふつ)とさせる。司
馬遼太郎の小説『峠』の舞台となった越後・長岡藩もそのひとつだった。
▼「恭順か否かという議論ほどやっかいなものはなく、継之助の議論を
もって相手を圧倒しようにも、思想の基盤が違うために不可能であった」。
執政を務めていた河井継之助は、奇策を用いて議論を収め、「武装中立」
の立場を取る。
▼結局官軍との和平交渉に失敗し、全面戦争となった。城下町長岡は、
焼け野原となり、継之助も戦死する。代わって藩政を取り仕切ったのは、
これまで継之助を批判してきた小林虎三郎だ。
▼窮状を見かねて他藩から贈られた米百俵を、虎三郎は藩士に分配せ
ずに売却してしまう。子供たちの教育費に充てるためだ。このエピソード
を基にした山本有三の戯曲を、小泉純一郎元首相が所信表明演説で紹
介し、流行語にもなった。郷土の英雄か、それとも戦火に巻き込んだ張
本人か。継之助の評価は、今でも地元で分かれているらしい。
▼それでも小説のなかで、継之助が藩主を諫(いさ)めた言葉には、い
つの世もリーダーが胸に刻んでおくべき真実が含まれている。「おそれ
ながら今日よりのちは生きておらぬとお思い遊ばせ。その御気魄(きは
く)だけが、一藩を一つにいたしまする」。野田佳彦首相にその覚悟があ
るのか。