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11月4日
アテネに住む美しい人妻、リューシストラテーは、男たちに戦争をやめさせようと、
女たちに性的ボイコットを持ちかける。古代ギリシャ喜劇『女の平和』の冒頭のシーンだ。
▼彼女は次に、一部の女たちを引き連れて、アクロポリスに立てこもる。保管してある大金を、
戦費に流用させないためだ。そこへ老爺(ろうや)の一隊が、火だねを入れた壺(つぼ)を抱え、
丸太を背負ってやってくる。女たちをいぶり出そうというのだ。
▼岩波文庫(高津春繁訳)の解説によると、老爺は、自分たちの利益しか頭にない当時の
アテネ市民そのものだ。作者のアリストパネースは、平和主義を奉じるだけではない。
戦争の原因を衆愚政治に堕した直接民主政に求め、民衆を扇動する政治家を厳しく批判した。
▼『女の平和』の初演から2400年余り、債務危機に陥ったギリシャは国の行方を再び
直接民主政に託そうとしている。支援と引き換えにさらなる緊縮財政を迫るユーロ圏各国と、
それに反発する国民との板挟みになったパパンドレウ首相が突然、支援受け入れの是非を、国民投票にかけると言い出した。
▼国民の7割がユーロ圏にとどまることを望んでいるとの調査結果があるものの、楽観はできない。
投票で否決された場合、ユーロ圏のみならず、世界経済が大混乱に陥る恐れもある。
そもそも、投票実施には与党からも批判の声が上がり、首相の地位さえ危うい状況だ。
▼「これから後は、二度とふたたび過ちを重ねぬように用心いたしましょう」。芝居はリューシストラテーの
こんなセリフで大団円を迎える。今のギリシャの有様(ありさま)を見たら、末裔(まつえい)たちに言いたくなるかもしれない。
「あなたたちには少し、辛抱が必要ですね」と。