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産経抄 10月6日
ノーベル賞について、きのうに続いて書く。ラルフ・スタインマン博士(68)
の医学・生理学賞“死後受賞”の報から、3年前、大腸がんのために66
歳で世を去った、物理学者の戸塚洋二さんを思い出していた。
▼今年の物理学賞は、宇宙の膨張が加速していることを超新星の観測
で突き止めた米豪3人の学者に輝いた。宇宙生成の謎を追うという意味
では、戸塚さんはライバルといえる。2002年にノーベル賞を受賞した小
柴昌俊さんの弟子に当たり、本人も有力候補者だった。
▼スタインマン博士は、自ら発見し、受賞理由にもなった免疫細胞を使っ
て、膵臓(すいぞう)がんと闘ってきた。戸塚さんはがんの転移がわかっ
てから、病状をブログで公開し、大きな反響を呼んでいた。
▼抗がん剤の投与回数と腫瘍マーカーの変化をグラフ化するなど、緻密
な病気の分析は物理学者ならではだった。がん患者の不安を少しでも軽
くするために、治療法などのデータベース化も訴えていた。受賞がかなわ
なかった戸塚さんは、スタインマン博士に比べて「不運」だったのか。否で
ある。
▼素粒子ニュートリノが光より速く飛ぶ。名古屋大などの国際実験チーム
が、先月発表した観測結果は、世界に衝撃を与えた。タイムマシンの可能
性まで取りざたされたほどだ。そもそも発端は、戸塚さんたちが、岐阜県飛
騨市の神岡鉱山にある大型観測装置スーパーカミオカンデで行ってきた
実験だ。その成果をふまえて1998年、ニュートリノが質量を持つ、証拠を
見つけたことを明らかにした。
▼根っからの「実験屋」を自称していた戸塚さんは、天国で早速今回の実
験結果を精査しながら、後輩たちの仕事ぶりに、目を細めているだろう。