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10月5日
日本の偉人伝の常連である野口英世は30代でノーベル賞候補になった。米国での研究で
梅毒の病原体スピロヘータの純粋培養に成功した功績によってである。野口自身、日本の恩師への
手紙に「日本人はまだ一人ももらっていません」と誇らしげに書いたという。
▼だが「日本初」の栄誉には浴さないまま昭和3年、アフリカで研究中の黄熱病にかかり51歳で世を去った。
もっと長生きすれば受賞できたかどうかはわからない。しかしノーベル賞にも運・不運がつきまとい、
「時間」との闘いがあることは事実のようだ。
▼科学研究への賞だから間違いがないか、第三者による検証が必要で、相当の時間がかかる。
あのアインシュタインでも論文発表から受賞まで16年を経ている。待たされている間に、
それを上回る研究がなされたり「賞味期限」が切れたりすることもある。
▼今年の医学・生理学賞に決まったラルフ・スタインマン博士の場合はどうだろう。受賞決定のわずか3日前に
亡くなっていたという。「死去した人には授与しない」というノーベル財団の規約違反だ。
しかし事前の確認を怠った財団側は「特例」で受賞を認めるそうだ。
▼授賞側のミスでノーベル賞学者に加われた博士や遺族にとっては「幸運」だったかもしれない。
だが3日間の時差で、本人への知らせが間に合わなかったことを考えれば「不運」ともいえる。今頃は、天国で聞いて苦笑していることだろう。
▼とはいえ、ノーベル賞は科学を目指す者にとっては最大の目的だ。受賞者を出した国にとっても誇りである。
それなら「残念賞」とはいわないが、不幸にして受賞できなかった立派な研究を称(たた)える何らかの仕組みがあってもいい。