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産経抄 10月4日
「善は急げ」ということわざの意味は、よいと思ったことは、急いで実行
せよ、だ。ただし「善」には、解釈が2通りある。ひとつは、「人や社会へ
の善行」であり、もうひとつは、「自分にとってよいもの、好都合なもの」
だ(『岩波ことわざ辞典』時田昌瑞著)。
▼数日前の夕刊フジは、埼玉県朝霞市で進められてきた公務員宿舎
の建設を、突貫工事と報じていた。先月1日から、月曜日から土曜日ま
で1日10時間、天候に関係なく行われてきた。台風の影響で猛烈な風
雨に見舞われた日も中断されることはなかったという。
▼これほど急いだのは、国民への「善行」だからではない。あくまで財
務省にとって「よいもの」にすぎなかった。平成21年11月の事業仕分
けで、「凍結」と判定されながら、昨年12月に、財務相だった野田佳彦
首相が工事再開を決めた経緯がある。
▼もっとも、東日本大震災で多くの被災者が家を失い、あるいは家が
あっても帰れない状況のなかで、105億円もかけた宿舎の建設を世
論が認めるわけがない。野田首相はきのう、視察というパフォーマン
スをこなした上で、安住淳財務相に、凍結を指示するほかなかった。
▼首相としては、「臭い物に蓋」をして、何とか国民に、復興財源を賄
うための増税への理解を求めていく腹づもりのようだ。このことわざは、
不都合なことがらを、その場しのぎで取り繕う例えとして使われる。
▼『ことわざ辞典』によれば、明治時代までは、問題が大きくなる前に、
迅速に処置せよとの、肯定的な意味もあった。国会の答弁は安全運転
で乗り切っても、肝心の政策遂行に当たっては、後手に回りがちな野田
政権には、残念ながら当てはまらない。