産経抄ファンクラブ第163集 at MASS
産経抄ファンクラブ第163集 - 暇つぶし2ch151:文責・名無しさん
11/09/06 06:07:40.40 ZrCXycEkP
産経抄                                  9月6日
和歌山県新宮市で生まれ育った作家の中上健次に、『紀州-木の国・
根の国物語』(朝日文庫)というルポルタージュ作品がある。数々の小
説の舞台としてきた故郷を、もう一度見つめ直す取り組みだった。
▼最初に話を聞いたのは、新宮市に住む90歳のサン婆さんだ。23歳
で嫁入りした夜に大雨が降った。杉皮ぶきの屋根から雨が漏れ、花婿
が直しに行った。「自分の坐ったあるとこに雨ゃふってきて」と涙をこぼ
したという。
▼紀伊半島は雨が多い所だ。それでも四国、中国地方をのろのろ運転
で通過した台風12号による集中豪雨は、地元住民が経験したことのな
い激しさだった。和歌山県だけで4000人以上が孤立した。
▼那智勝浦町では、町役場で災害対策に当たっていた町長の自宅が
流され、妻と長女の行方がわからなくなった。遺体で見つかった長女は
この日、結納を交わすはずだったという。田辺市に住む男性は、押し流
される自宅から妻を連れ出すのが精いっぱいで、母親と高校生の息子
2人が不明のままだ。
▼なぜ、これほど被害が大きくなったのか。もともと「木の国」の呼び名
の通り、林業の盛んな土地だった。しかし、外材の増加や過疎化によっ
て、山林の荒廃が進む。同時に土壌から水を保つ機能が失われ、洪水
を抑制できなくなった、との指摘がある。
▼中上は半年にわたった紀伊半島を巡る旅の終わりに、自然について
語っている。確かに緑がしたたり、水が青々とする風景は、カメラを通し
、絵に写し取れば美しいかもしれない。ただ中上の眼には、「手に負えぬ
もの」「輝く事物の氾濫」として映った。「熊野の荒ぶる神」がもたらした阿
鼻叫喚の光景を、幻視していたのだろうか。


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