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産経抄 6月21日
「官僚をたたけば人気を博するというのは、日本でいちばんポピュラー
な政治家の手段である。こうすれば、『社会の隠れた力の化身』でもあ
るかのように、政治家は行動しがちである」。
▼かねて政治ポピュリズム(大衆迎合主義)に警鐘を鳴らしてきた山内
昌之東大教授が、『政治家とリーダーシップ』(岩波書店)のなかで指摘
していた。「官僚」を「原発」に入れ替えれば、現在の日本の政治状況に
見事にあてはまる。
▼大阪市の平松邦夫市長はきのう、関西電力の八木誠社長に「脱原発」
を提案した。一方、関電が要請している一律15%の節電は困難、との
立場を伝えたという。なんだか矛盾しているが、平松市長とは、犬猿の
仲であるはずの橋下徹大阪府知事も、この問題では同一歩調を取って
いるようにみえる。
▼政府としては、夏場に需要ピークを迎える電力の確保に四苦八苦し
ている。本来なら、関係者を説得して、定期検査を終えた原発の再稼働
に道筋を付けるのは、菅直人首相の仕事のはずだ。もっとも権力の座に
一日でも長くいたい首相は、世間の反発を招きやすい「汚れ仕事」には、
興味がないようだ。
▼海江田万里経済産業相に任せっきりで、自らは、「脱原発」のイメージ
作りに余念がない。浜岡原発の停止や太陽光パネル1千万戸設置構想、
自然エネルギーの買い取り制度など、国家戦略の根幹をなすエネルギー
政策が、大した論議のないまま大きく変えられつつある。
▼山内さんは「痛みの伴う改革の責任はポピュリズムを支えた市民たち
が負うべきもの」とも述べている。企業が海外に逃げ出し、高い電力料金
の負担だけが残ってから、こんなはずではなかった、と嘆いても遅いのだ。