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産経抄 6月1日
早坂隆氏の『世界の日本人ジョーク集』に「スープに蠅が入っていたら?」
というよくできた話がある。「問題なく蠅を食べる」という中国人など、各国
の人々の反応をジョークとして取り上げている。中でも対比がおもしろいの
が、米国人と日本人だ。
▼米国人は「ボーイを呼び、コックを呼び…あげくに裁判沙汰となる」。一
方の日本人は「自分だけに蠅が入っているのを確認してから、そっとボー
イを呼びつける」。訴訟大国の米国と、なるべくなら争いごとを避けたい日
本との風土の違いを示しているように思える。
▼だが一昨日、最高裁で判決があった国歌斉唱時の起立をめぐる裁判を
見ると、日本も訴訟大国になったのでは、と錯覚させる。東京だけでも国
旗・国歌をめぐる同様の訴訟が24件も起きている。750人近い教職員が
その当事者となっているというから、驚きである。
▼自分の思想信条と合わない職務命令には従いたくない。聞こえはいい
かもしれないが、普通の企業や組織ではそれは「わがまま」という。「蠅一
匹で」とはいわないが、処罰を受けたら裁判に持ち込むというのなら、世の
中訴訟だらけになってしまう。
▼幸い、最高裁の判決では斉唱時の起立を求めた職務命令は思想、良心
の自由を侵害せず、合憲と断じた。4年前、国歌のピアノ伴奏の命令も合
憲となっている。司法としてこれ以上の判断はない。いいかげんに不毛な
議論はやめ、命令に服したらいかがか。
▼国難といわれる今、日本人は心をひとつにすべきときだ。それなのに、
何百人もの先生たちが国旗や国歌に背を向けて裁判闘争にうつつを抜
かす。日本を応援している外国人たちの目にどう映っていることだろう。