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産経抄 5月18日
真相は、物事が起きてから時間がたたないと見えてこないのは、重々わ
かっているつもりだ。とはいえ、福島第1原発で水素爆発が起こってから
2カ月以上もたって「実は地震の翌朝には全炉心溶融(メルトダウン)して
いたようです」と言われてもねえ。
▼メルトダウンという言葉は、32年前に起きた米スリーマイル事故とその
わずか12日前に封切られた映画「チャイナ・シンドローム」によって広まっ
た。事故を予見した映画は、リポーター役のジェーン・フォンダと技師役の
ジャック・レモンの熱演もあって日本でもヒットした。
▼チャイナ・シンドロームとは、米国で原発がメルトダウンすれば、核燃料
が地球の裏側の中国に突き抜けるという意味だ。もちろん、ジョークだが、
メルトダウン→チャイナ・シンドローム→この世の終わり、と連想した読者
もおられるのではないか。
▼2、3号機もメルトダウンしている可能性が高い。ますます背筋が寒くな
るが、工学者の武田邦彦氏に言わせれば「これまでにあまりに多い放射
性物質が出たので、それに比べるとたいしたことはない」そうだ。
▼武田氏ら在野の科学者は、早くから「燃料は破壊されて原子炉の下に
落ちているだろう」と指摘していた。にもかかわらず、「メルトダウン」のイ
メージにおびえたのか政府も東電も認めようとしなかった。
▼武田氏は「日本のメディアは『事実』より『公式発表』を重んじる」とブロ
グで皮肉っている。日ごろ偉そうなことばかり書いている抄子も耳が痛い。
せめて、原子炉がメルトダウンしている最中に視察を強行するような首相
にまともな政治は期待できない、という「事実」だけは書いておきたい。