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5月7日(土)朝日新聞東京版朝刊オピニオン面「耕論」 ”3・11 自衛隊”
「非軍事の救援組織へ転換を」 水島朝穂(早稲田大教授)
今回の大震災は、被災地が南北600キロもの広範囲に及び、2万6千人近くの
犠牲者・行方不明者が生まれ、今も12万以上の人々が避難所生活を余儀なく
されている。阪神大震災を被災範囲、被災者とも大きく上回る。
私は阪神大震災の教訓から、消防レスキューのような災害救助組織を本格的に
発展させることが必要と考え、安易な自衛隊活用論に疑問を呈してきた。だが、
これほどの災害規模となると、現状において、人的動員力や輸送能力、陸海空の
組織を統合運用する能力で優れる自衛隊に頼らざるを得ない。
(略)
しかし、そのうえで指摘しておかねばならないのは、災害救援活動は自衛隊にとって
「わが国を防衛する」という「本務」ではないということだ。06年の自衛隊法の改正で
国連平和維持活動などの海外派遣の本来任務化がはかられたが、災害派遣は「従たる
任務」、つまり付随的な活動のままであった。背景には「自衛隊はあくまで武装組織」
だという「軍」としての自己認識があるからだろう。
今回の救援活動では、陸上自衛隊の東北方面総監(陸将)が陸海空の部隊を一元的に
指揮する統合運用がなされている。また、報道によれば、米軍横田基地には陸上幕僚
監部の防衛部長(陸将補)が常駐し、在日米軍との連絡調整に当たっていた。
武力攻撃事態という意味での「有事」でこそないものの、災害救助を名目に、「有事」を
想定した自衛隊の運用と、日米防衛協力の指針(ガイドライン)などで定められた自衛隊と
在日米軍の連絡調整の全面的な「試用」が行われている。なし崩し的に自衛隊の「軍」としての
側面が強調され、自衛隊と在日米軍の一体化が一層進むことにならないか。これは憲法との
関係で疑義がある。災害派遣の評価は自衛隊の「軍」としての強化の肯定を意味しない。
日本がいま直面する危機は、未曾有の大災害と原子力災害である。自衛隊の「軍」としての
属性を徐々に縮小し、将来的には海外にも展開できる、非軍事の多機能的な災害救助部隊に
転換すべきではないだろうか。