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【産経抄】10月24日
2010.10.24 03:01
このニュースのトピックス:産経抄
山歩きを愛してきたドイツ文学者の池内紀氏によれば、ヒグマとの最良の親しみ方は「出くわ
さぬこと」(岩波新書『森の紳士録』)だそうである。お互いに出会っても、ろくなことはない。だか
ら「遠くからそっと動静をながめているのがいい」という。
▼だが人間とクマは不幸な出会いを重ね過ぎたらしい。続出しているクマの事件を見てもわ
かるように、互いの「不信感」がピークに達しているかのようだ。特に人間の側は、クマが強いば
かりでなく頭が良く見えることもあって「獰猛(どうもう)」「狡猾(こうかつ)」といった言葉を勝手
に押しつけてきた。
▼クマにとっては迷惑千万な話だろうが、西欧ではさらにこのクマのイメージをロシアに重ね
てきた。あくなき領土拡張で近隣諸国に脅威を与え、巧妙な外交で他国を翻弄(ほんろう)する。
風刺漫画でも、そんなロシアをクマになぞらえるのが定番のようなものだった。
▼しかし今の日本人にとっては、中国の方が「ロシア型のクマ」のように思える。経済発展に
自信をつけ、歴史問題で日本を恫喝(どうかつ)する。東シナ海や南シナ海を自らの内海にす
るように艦船が動き回る。「傍若無人」としか言いようがない。
▼尖閣諸島をめぐっては、反日デモなどでさんざん脅した後に「棚上げしよう」と言ってきて
いるという。うっかり乗ると、長年の日本の固有の領土が「白紙」に戻ってしまう。その上で奪っ
てやろうという魂胆だろうから、何ともしたたかな戦略だ。
▼歴史的にみても「遠くからそっとながめる」のがいい国なのかもしれない。だが今はそうも
いかない、やっかいな隣人になった。むろん責任の一端は、ヒグマを縫いぐるみの子グマと勘
違いして、安易に近づいた日本人にある。