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産経抄 10月17日
古い話で恐縮だが、昭和32年、藤山愛一郎氏が岸内閣の外相に起用されたとき、
絶妙の批判があった。「絹のハンカチを雑巾(ぞうきん)に使うな」というのだ。藤山
氏は若くして父親の後をついで会社を経営、東京商工会議所の会頭などもつとめ
ていた。
▼そんな財界の「プリンス」を汚い政界に引き込むな。そんな批判だった。それでも
藤山氏は日米安保条約改定を成し遂げると派閥を結成、自ら政界にどっぷりと浸
(つ)かった。だが結局はその「泥沼」に埋没し念願の首相の座には届かなかった。
▼参院議員となって間もない谷亮子さんをこの大政治家に例えたら、藤山氏の支
持者には怒られるかもしれない。しかしその立場は少し似ている。何しろ柔道界で
の谷選手は、高校生で日本の頂点に立ち、オリンピック2連覇など、有り余るような
栄光に包まれてきた。
▼だから引退となれば本来、日本中のファンが惜しんだはずだ。万雷の拍手で送っ
たことだろう。だが、政治家に専念するとして行った引退記者会見には、どこか白け
た空気が漂った。「国会議員となった以上引退は当然」といった冷ややかな声も聞
かれた。
▼第一、なぜその席にあの小沢一郎氏がいたのだろう。谷さんが小沢氏崇拝者だ
といっても柔道とは全く関係ないはずだ。どうやら、検察審査会の議決による強制
起訴で窮地に陥った小沢氏が「谷人気」で起死回生をはかろうとした引退劇ではな
いか。そんな疑問さえ感じさせた。
▼やはりこれも、絹のハンカチが雑巾に使われた類(たぐい)の話だろう。そう言われ
たくなかったら、早く一人前の政治家に成長することである。民主党内の権力争いに
利用されることなく、日本の将来を見据えた政治家になってほしい。