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産経抄 10月16日
もう散ってしまった所もありそうだが、庭先や垣根から金木犀(きんもくせい)の香りが
漂ってくると秋の深まりを感じさせる。別名は九里香で、原産地の中国では千里先ま
で届くと言われるそうだ。「白髪三千丈」の世界だが、日本でも強い香りを好み、植え
る人が増えている。
▼だがその芳(かぐわ)しさも、かぐ人によっては悲しい香りとなることがある。拉致被
害者、横田めぐみさん(46)の両親、滋さんと早紀江さんはこの秋、次のような文で
始まる手紙を支援者らに送ったそうだ。「今年も又めぐみのいない金木犀香る頃とな
りました」。
▼めぐみさんの誕生日は10月5日、金木犀の小さな花が咲きそろう頃である。そし
て香りが終えた後には、めぐみさんが13歳で北朝鮮に拉致された11月15日がや
ってくる。秋の空気の中で娘の帰りを待つ2人の心情を思えば、胸がしめつけられる
ようだ。
▼横田さんら拉致被害者の家族の悲しみが深いのは、事件解決に進展が感じられ
ないからだ。菅直人改造内閣ができてもなぜか担当大臣を国家公安委員長から法
相に代えただけである。何としてもこの内閣で被害者を取り返すのだ、という気合は
まるで感じられない。
▼一方の尖閣問題では、前原誠司外相がちょっと気概を見せた。会合で「国会議員
は体を張って(尖閣を)実効支配していく腹づもりを」と語ったそうだ。弱腰(柳腰では
ない)ばかりが目立つ菅内閣の中で、久しぶりにスッとするような口上だった。
▼だがそれなら、拉致についても「体を張って」と号令してほしかった。政治家であれ
ば、黒塗りの車に乗ってばかりでなく、たまには街を歩いてみたい。金木犀の香りか
らも拉致問題の深刻さを感じることができるのだから。