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平成17年7月1日 再録
暦を見ていて一日が「ウォークマンの日」と呼ばれていることを知った。昭和五十四年
のこの日に、ソニーが初めてヘッドホンステレオを発売したのだとか。同社は特にPR
していないというが、昭和中期生まれの筆者には衝撃的な新商品の誕生だった。そ
れ以来、ヘッドホン族が急増した。
▼音楽には力がある。映画や舞台でも場面に音楽が重なるだけで気持ちを揺さぶら
れる。そんなBGM効果を、日常生活に持ち込んだのがヘッドホンステレオだった。音
楽に浸りながら街を歩くと、ありふれた風景も彩りを濃くする。
▼なにより街にあふれる醜い音を聞かずにすむ。案内の音声、セールの呼びかけ、
雑多なCM、聴きたくないBGM…。音の洪水の中で無意識に耳をふさいでいるのだ
が、聴くなら好きな音楽がいい。筆者も一時は愛用していた。
▼いまは、カセットもCDも不要のデジタル音楽プレーヤーが全盛だ。軽く安価にな
って拍車がかかっている。それは結構なことだが、気になるのは自分だけの空間に
閉じこもっている利用者が多いことだ。たとえば例のシャカシャカ音。自分が騒音源
になっているという自覚がない。
▼音楽に気を取られ、周囲への気配りを忘れている場面も目に余る。電車の座席で
化粧をする女性やあたりかまわず飲食する若者、騒いでいる子供を注意しない親と
同類で、公共意識が欠けている。ヘッドホンと一緒に自分の部屋を外にまで持ち出さ
れては困る。
▼聴覚セラピーについて取材したことがある。現代人の中には耳の器官に問題がな
くても、騒音やストレスなどで一部の音を聞き取れず、その障害に気づかない人も多
いという。それを治す療法だったが、感性の障害もなんとかならないのだろうか。
参考までに