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産経抄 10月11日
東京郊外を走る私鉄の車内で、女子高生2人と隣り合わせた。2人は念入りな化粧を
終えた後、おしゃべりを始めた。この年代の女性と話をする機会はほとんどないから、
悪いと思いながらも、つい耳をそばだててしまう。
▼お互いのボーイフレンドの情報交換から一転、話題は深刻になる。「進学、就職?」
「就職。でも、多分無理。フリーターかな」「フリーターなんか、やめときなよ。経済力な
いと、ろくな男が寄ってこないよ」。
▼来春、高校卒業予定の就職希望者1人に対して、何件の求人があるのかを示す求
人倍率が、夏の時点で1倍を割り込んだことは、ニュースで知っていた。彼女たちの話
を聞いていて、就職環境の厳しさが、よりリアルに感じられる。
▼10月に入って、大学3年生の就職活動も本格化している。4年生、就職浪人組を含
めて、熾烈(しれつ)な戦いになりそうだ。「就職氷河期」の背景に、リーマン・ショック
以降の景気の低迷があるのは言うまでもない。グローバル化を進める大企業が、国
内の求人を減らす一方で、学生の間にいまだに残る「大企業信奉」も障害となってい
るという。
▼そんななか、「就活」をテーマにした有川浩さんの小説『フリーター、家を買う。』(幻
冬舎)が、フジテレビ系でドラマ化される。小説では、就職を果たした主人公の青年が、
今度は採用担当となり、自分の経験を生かしたユニークな選考基準を打ち出していく。
▼もちろん現実は、小説のハッピーエンドのようにはいかない。くだんの女子高生の1
人は、先に降りる少女に声をかけた。「物騒(ぶっそう)な世の中だから、気をつけてね」。
大変な時代に生きている彼女らに幸あれと、願わずにはいられない。