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産経抄 9月25日
今から35年前の昭和50年8月4日、マレーシア・クアラルンプールにある米国
領事館などを「日本赤軍」を名乗るグループが乗っ取った。彼らは人質を盾に、
拘置中の日本赤軍のメンバーらの釈放を要求する。クアラルンプール事件である。
▼むろん日本の法に照らせば応じられる話ではない。だが三木武夫首相は訪米
中で、翌日には当の米国との首脳会談が予定されていた。指揮を任された福田
赳夫副総理は「人命尊重」を理由にその日のうちに5人の釈放を決定、クアラル
ンプールに「脱出」させた。
▼「超法規的措置」と説明されたが、検察当局や警察、国民はとうてい納得しな
かった。案ずるかな2年後のダッカ事件でも、過激派3人が「超法規的」に釈放さ
れる。日本は世界から「テロ組織を増長させている」との批判を浴び、後々まで
禍根を残した。
▼沖縄・尖閣諸島付近での中国漁船の領海侵犯事件で、那覇地検が船長の釈
放を決めた。処分保留である。地検側はその理由を「計画性がなかった」とする
一方、「わが国民への影響や、今後の日中関係を考慮した」と述べた。だがこれ
は極めて妙な話だ。
▼検察はあくまで違法性があるかどうか、またはその軽重を考慮して処分を決め
ればいい。外交問題への配慮など聞いたことがない。それだけにこうした発言は、
処置が政府の決定による一種の「超法規的措置」であることを雄弁に物語ってい
る、と思わざるをえない。
▼仙谷官房長官がいかに「那覇地検の判断」ととぼけて見せようとも、中国側の
圧力にあっさり屈したことは国民の目には明らかだ。クアラルンプール事件の何
倍もの禍根を残す。領土も守れないような政権は即刻、退陣を願いたい。