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〈自民、民主争ふごとし小流れをはさみて陣を張る曼珠沙華〉。歌人、竹山広(ひろし)の作品は、小欄で
何度か引いてきた。今年の曼珠沙華(まんじゅしゃげ)の開花を目前にして陣を張るのは、菅直人首相と小
沢一郎氏だ。両氏はきのう、民主党代表選への立候補の届け出を行った。
▼長崎市内で被爆した竹山は今年3月90歳で亡くなるまで、原爆の惨状を詠み続けた。一方で、身の回
りの出来事や日本の政治も題材にしている。菅首相と小沢氏の名前は見当たらないが、鳩山由紀夫前首
相を詠んだ歌はある。〈鳩山の兄と弟と勘違ひしてゐしころの兄とおとうと〉。
▼もともとこの程度の存在感しかない人物だった。9カ月の首相在任を振り返っても、失政の数々と偽装
献金疑惑を頬(ほお)被(かぶ)りした姿しか思い浮かばない。よせばいいのに、菅、小沢両氏の仲介役を買
って出て、かえって党内を大混乱に陥らせた。「ぼくは一体、何だったんでしょうね」。前首相のぼやきを聞
いた側近議員は、体から力が抜ける思いだろう。
▼反原爆、反戦の歌人は、「平和」を叫ぶだけの勢力とは距離を置いていた。〈社会民主党を見捨てし老
骨に痛きところのさしあたりなし〉。もちろん自民党、民主党の支持者でもない。
▼「国民のための政治」「政治、行政、経済、社会の仕組みを一新」。きのう両氏が発表した「政見」には、
相変わらず口当たりがいいだけの言葉が並ぶ。竹山はシニカルに詠む。〈日本のここを変へたいといふ主
張みな立派なり言ふだけなれど〉。
▼戦後もっとも暑かった8月がようやく過ぎたというのに、欲と保身が入り乱れる暑苦しい戦いが、今月中
旬まで続く。〈秋にならば秋にならばといひて待つ今年の秋よいつわれにくる〉。