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産経抄 8月23日
昨年夏から、在大阪インド総領事を務めるヴィカス・スワラップさんが、日本に来て一番
驚いたのは、日本人が英語を話せないことだった。小紙(大阪版)のインタビューで語
っている。戦後米軍の駐留を経験し、トヨタやソニーを生んだ国なのに、と首をかしげる。
▼スワラップさんは、昨年大ヒットした映画『スラムドッグ$ミリオネア』の原作者(邦題
『ぼくと1ルピーの神様』)だ。スラムに暮らす18歳の無学の少年が、なぜクイズ番組
で全問正解し、巨額の賞金を獲得できたのか。謎を解き明かすうちに、インド社会の諸
相をあぶり出していく。
▼映画ではカットされたが小説では、英国人神父から学んだ英語が、少年の危機を何
度も救う。スワラップさんによれば、英語はインド社会で上に昇るための「はしご」にほ
かならない。
▼楽天などが社内の英語公用語化を発表して、「日本人と英語」をめぐる論議に再び
火がついた。日本人同士が英語で行う会議など、こっけいとしか言いようがない。一方
で英語に限らず、語学下手と公言していいのは、ノーベル賞受賞者の益川敏英教授ら
一部の天才だけという気もする。
▼ところで、近ごろ「幸福立国」などともてはやされるインドの隣国ブータンは、「英語立
国」をめざしている。小学校から英語で授業を受けているから、若者は総じて英語が堪
能だ。それを生かしてコールセンター誘致の計画もある。
▼20年近く前この国を訪れたとき、親しくなった政府の役人から下手な英語をからか
われた。「日本人は世界を制覇するつもりだから、英語は必要ないんだろう」。バブル崩
壊の前、日本人の鼻息がまだ荒かった。いまではこんな“誤解”を受けることもない。